ソフトバンク・ビジョン・ファンドやフィフス・ウォールが不動産テックカンファレンスに登場

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ソフトバンク・ビジョン・ファンドやフィフス・ウォールが不動産テックカンファレンスに登場

はじめに

Amazonがアメリカの不動産業界への本格参入を発表しました。『Realogy(リアロジー)』という仲介会社との提携発表です。『Realogy』は、アメリカ最大手の仲介会社です。抜群の知名度を誇る『Realogy』と提携し、Amazonは『TurnKey(ターンキー)』という不動産サービスを公開しました。先週の出来事です(2019年7月23日付)。

画像出典元:https://turnkey.realogy.com/

“Amazon不動産”のニュースが日本で話題になっているのは、アメリカが不動産テック先進国だから。先進国のトレンドは、いずれ、日本にやって来るとされています。

視野を広げ、世界を見渡すと違ったトレンドもあります。日本では【不動産×IT=不動産テック】です。ところが、海外では【不動産×IT=Proptech(プロックテック)】と呼ばれています。Proptechを冠にしたイベントやカンファレンスは世界中で開催されています。以下をご覧ください。

画像提供元:PropTechJapan

この資料は、PropTechJapanのファウンダーである桜井駿氏(画像下)が作成したものです。桜井氏は、Proptechのキーワードを日本に浸透させるべく、PropTech Meetupというオープンコミュニティのイベントを定期的に開催しています。資料によると、開催場所はアメリカ、シンガポール、オーストラリア、ノルウェー、ボリビア、イギリス、チリ、フランス、ドイツ、アルゼンチン、カナダ、フィンランドなど、さまざまです。世界各地で、Proptech(=不動産テック)のカンファレンスが実施されています。なかでも、Proptechカンファレンス世界一を主張しているのが、2015年にスタートした、Future Proptech(フューチャープロップテック)です。

Future Proptech 2019 Londonの来場者数は約2,000名。このイベントは今年(2019年)の5月13、14日に開催されました。現地を見て回った桜井氏は6月に日本で報告会を実施。このときの内容を本記事で取り上げます。

2015年からグローバルに不動産テックの情報を発信する世界的なカンファレンスは、どんなコンテンツを扱っているのでしょうか。

スピーカーのジェンダーバランスを半々に

桜井:Future Proptechは、スタートアップをはじめとした、不動産業界のデジタル化、デジタルトランスフォーメーションの促進を掲げていてます。スピーカーは100名以上。50か国以上の国と地域から、700社以上の企業が参加していました。

桜井:今年のFuture Proptechの特徴を1つ挙げると、ジェンダーバランスへの配慮です。主催者が、「Future Proptechとして、今年はキチンとできた」と話していました。100名以上のスピーカーのうち、50名が女性です。Uber(ウーバー)のヨーロッパ統括担当者をはじめ、いろいろな企業の女性スピーカーが参加していたイベントでした。

桜井:私は金融、フィンテックにキャリアのバックボーンを持っていますが、フィンテックでもジェンダーバランスを意識しています。視察や登壇で世界各地を訪ねることがありますが、各国のイベントも、ジェンダーバランスを意識している印象です。

金融という“かたい”業界では、テクノロジー(=新しさ)を取り入れるとき、誰にとっても身近なテーマを扱うようにしてきた。こうすることで、多くの業界関係者に“テクノロジー”を自分事として考える、きっかけを作りたい。働きかた改革は誰にとっても身近なテーマであり、同じように身近なテーマとして、女性の働きかたがある

桜井:そうした意識です。Proptech領域でも、見習いたい意識だなと思っています。

不動産イベントの女性スピーカーは14%だった

桜井:ジェンダーバランスについて詳しく聞いたところ、Future Proptechでは、非営利組織である、「WOMAN TALK REAL ESTATE」を重視しているとのことでした。「WOMAN TALK REAL ESTATE」は、不動産業界で女性がスピーカーとして情報発信することを支援しています。この組織の協力を得て、スピーカーのジェンダーバランスを保っているそう。また、Future Proptechの場合は、「ジェンダーバランスを半々にするというスポンサーとの取り決め事項がある」とも話していました。

画像出典元:http://womentalkrealestate.org/

桜井:「WOMAN TALK REAL ESTATE」は、イギリスで生まれた組織です。2016年に誕生しました。彼女たちの調査によれば、2016年時点で、ヨーロッパで開催された不動産業界のカンファレンスに、女性スピーカーの存在は14%ほど。この割合を増やすための活動を「WOMAN TALK REAL ESTATE」はしています。今日、この会場にいる参加者も、男性が非常に多いですが、ProptechJapanとしても、彼女たちのような活動を日本で実践していきたいなと思っています。もし、ご賛同いただける人がいるようなら、ぜひ、お声がけいただけると幸いです。

クローズアップセッション「FUTURE is now」

桜井:Future Proptechのコンテンツに話を移しましょう。メインコンテンツは2つのステージです。「Mega Trends」と、「FUTURE is now」という2ステージです。このなかから、「FUTURE is now」のステージに集まった、世界の名だたるベンチャーキャピタルやパートナーたちのトークセッションを要約して紹介します。

桜井:まずは、スピーカーの紹介です。Proptechに特化した世界最大のベンチャーキャピタルであるFifth Wall、米国の『Compass(コンパス)』やインドの『OYO(オヨ)』への投資で注目度を高くしているSoftbank Vision Fund、商業用不動産の領域やデータリサーチにおいて高い信頼性を誇るJLL(ジョーンズ ラング ラサール)などの面々です。

Softbank Vision Fundは「100ミリオンから」

桜井:彼らのセッションは、このステージのなかでもっとも動員数が多かったと思います。非常に盛り上がったセッションでした。とくに、Softbank Vision Fundが聴衆をわかせていました。彼らは、Proptechに特化したファンドではないものの、『Compass』をはじめとした米国のPropTech領域に積極的な姿勢で資金を投じています。

不動産セクターは遅れている。Softbank Vision Fundとしては集中していきたい分野だ。イチかバチかをはるには、悪くない。この業界は見逃せない。不動産業界の変革は初期段階で、まだまだ進化するだろう。自分たちは100ミリオンUSドルからの投資であり、この金額が最低ロットだ(Justin Wilson)

桜井:そうしたことを主張していました。モデレーターからは「100ミリオンという大きな金額を口に出したいだけだろ」のように、からかわれていたんですが、これに、Softbank Vision FundのJustin氏は真剣な表情を作り、次のように切り返していました。

いや、最低金額だ

桜井:Justin氏の拠点は米国のカリフォルニアにあるそうですが、ロンドンやアジアにも別拠点を構えているとのことで、さまざまな拠点から、今後もProptechへの投資を加速させていくと、付け加えていました。

桜井:このパネルディスカッションの最中に、JLLが何度も繰り返していたのは、オープンイノベーションの重要性でした。従業員の多いJLLは、投資をする部署以外にも、アクセラレートするだけの専門部署を抱えています。この2部署の人員を戦略的に配置することで、JLLと協業する相手の事業をしっかり伸ばす、支援すると。コンサルタントとしての機能を社内に持ち、高い機動力でグローバルに仕掛けていくというJLLのメッセージは印象的でした。

注目を浴びるゴーストキッチン、クラウドキッチン

桜井:もう一つ、印象に残っているのは、マクロ的な視点からProptech領域を見たとき、景気が後退したとしても、レンタル市場は、まだまだ可能性を秘めているという点です。

不景気になったときほど、そのときの需要で伸びるチャンスがある。レンタル市場に投資をしていきたい

桜井:そうしたメッセージをスピーカーたちから受け取りました。代表的なリード投資の事例として紹介されたのが、Clutterという貸倉庫のサービスでした。

画像出典元:https://www.clutter.com/

桜井:Clutterは、Softbank Vision Fundからの投資を受ける、米国・西海岸の企業です。Clutterを日本国内の会社に置き換えると、『サマリーポケット』のような会社です。あのようなビジネスモデルの会社、ビジネスモデル、市場には、まだまだ成長の余地が残されていると話していました。そのための投資家も集めていると。Clutterは、すでに、ユニコーンと呼べる規模の会社ですが、彼らのような会社には今後も注目です。

画像出典元:https://pocket.sumally.com/

桜井:もう1つ。面白いと思ったのが、フィフス・ウォールのプリンシパルである、Roelof Oppermanが繰り返し使っていた、ゴーストキッチン、クラウドキッチンというキーワードです。

桜井:「不動産ベンチャーの勢いをみるとき、資金調達の額だけで判断してはいけない」という、彼の言葉も忘れられません。

資金調達の額は、テックベンチャーの“実体”を表してない(Roelof Opperman)

桜井:ここでいう実体とは、ある国、ある地域、ある社会に与える影響や目に見えない貢献度などを指します。その代表例としてCLOUDSIGNの名前が挙がりました。

画像出典元:https://www.cloudsign.jp/

桜井:CLOUDSIGNは、“純粋な”PropTechベンチャーではありません。「Proptech企業ではないが、Proptechにとても貢献している」という話がパネルディスカッションではありました。人々の暮らしやその周辺にある産業は、今後のProptech領域に重要で、ゴーストキッチンやクラウドキッチンも、それに該当すると。だから、とても注目しているという話でした。飲食店の場合なら、店舗を運営し、新しい店舗を出店していくという発想が一般的です。来店客のデータから、「そのほとんどが遠方からのお客さんであり、大多数が一定のエリアから来ている」のであれば、「そのエリアに出店しましょう」という選択肢が選ばれてきました。ここに、ゴーストキッチンやクラウドキッチンといった、新しい選択肢が登場しているのです。

桜井:昨今、フードやデリバリー系のサービスにITを活用した事例が目立つようになりました。これらとの連携、協業により、ゴーストキッチンやクラウドキッチンという“ハブ”を構えるという選択肢です。

新しい店舗を出すよりも、デリバリーサービスと連携することで、ゴーストキッチンやクラウドキッチンなどの拠点から、いろいろな場所に商品(フード)を届けることができる。この選択肢に、いま、注目が浴びせられている(Roelof Opperman)

桜井:実例として、ロンドン郊外の話が紹介されました。そのエリアでは、飲食店への注文の半分がデリバリーであり、売上の半分がデリバリーによるものだそうです。どの地域から誰が注文しているかがわかり、このマーケティングを生かせば、インターネットによるオンライン注文を増やせます。接客スタッフの確保という難題から解放され、人件費の工面に追われることもありません。人目をひく場所、アクセスに優れた場所などの、よい条件の場所に出店する必要もないのです。店舗物件を管理する側からすると、その建物が古くなり、冴えない見た目や古くさい作りの店舗であったとしても、新たな活路が見えてきます。ゴーストキッチンやクラウドキッチンとして店舗物件を活用し、インターネット経由によるオンライン注文で、デリバリーと連携して商品を届けるという活路です。

桜井:これは、シェアリングエコノミーの延長線上にあるアイデアであり、デリバリー系のスタートアップ×不動産領域による、新たなエコシステムといえるでしょう。Clutterのビジネスモデルの根底にも、同じようなエコシステムの価値観があります。これらは、不動産業界と周辺産業が結び付くことで生まれる、新しい世界です。パネルディスカッションで彼らが、「非常に注視している世界観だ」と発言していたこともあり、印象に残りました。

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