【レポート】3度目のシェアサミット開催  いま民泊ビジネスのあり方を考える    

【レポート】3度目のシェアサミット開催  いま民泊ビジネスのあり方を考える

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【レポート】3度目のシェアサミット開催  いま民泊ビジネスのあり方を考える

9月7日、不動産テックにかかわるイベントがありました。一般社団法人シェアリングエコノミー協会主催の「シェアサミット」です。

東京都千代田区の「Nagatacho GRiD」でシェアリングエコノミーをテーマにトークセッションが複数行われ、その中に民泊にかかわる興味深いセッションが予定されていました。

法的ルールが整い始めた民泊市場の今後の民泊の在り方について、立場の異なる3名が登壇し、各々が持論を披露するものです。

実際のレポートをダイジェストでお届けします。

「シェアサミット」とは、一般社団法人シェアリングエコノミー協会が年一回開くトークイベントです。シェアリングサービスの提供企業で構成される同協会が、シェアリングエコノミーのサービス提供者や自治体の有識者を招き、議論を交わします。

イベント開催の目的について重松大輔会長は、「シェアリングエコノミーはまだまだ新しい概念。様々な立場の方のご意見を発信し、政府や自治体と良い付き合いを重ねながら、世間への周知を進めたい。規制の壁に直面しつつも、シェアリングエコノミーに対する世の中の注目度は年々増しています。その証拠に、自前主義に限界を感じている大企業が近年、シェアリングエコノミー企業との協業を活発化させています。シェアリングエコノミーの可能性に、期待しています」と自信を覗かせました。

 

個人が主役の経済へ

サミットの冒頭、重松会長が協会の新ビジョンを掲げました。シェアリングサービスが普及し、そこから収入を得る「シェアワーカー」の存在が台頭。彼らの周りにNPO法人やパートナー企業、自治体がかかわる事例が増えてきました。こうしたことから「シェアサービスのみで個人が生きていける時代になった」(重松会長)と強調しました。

シェアサービスの可能性は行政も注目しています。総務大臣政務官の小倉將信氏は祝辞で「地方は金不足でなく人不足。シェアリングエコノミーを使ってタクシーサービスを充実させるなど、潜在的に求められているサービスがある」と期待の旨を述べました。

また経済産業省商務情報制作課長の西山圭太氏も「シェアリングエコノミー協会の取り組みがイノベーションの柱になれば」とコメントしました。

個人が主役になって働ける未来を築くために何が必要か。シェアリング・ソサエティー実現の上で、サービス提供者や自治体がどういう仕組みをつくらなければいけないのか。こうした課題を焦点に、当イベントで様々な議論が交わされます。

 

「SHARE × HOME・STAY 〜民泊・ゲストハウス・旅館経営から考える〜」

不動産領域では、民泊サービスをテーマにした「SHARE × HOME・STAY 〜民泊・ゲストハウス・旅館経営から考える〜」が約40分にわたり催されました。

一定条件のもとで全国一律に民泊経営を認める「住宅宿泊事業法」が6月15日に施行された今、法規制を受けて民泊ビジネスがどうあるべきか。旅館業界、ゲストハウス業界、行政側の立場から三者三様の意見が交わされました。

登壇者は全4名です。

  • 一般社団法人日本旅館業界の副会長、鶴田浩一郎氏。
  • ゲストハウスの企画・運営を手掛けるNPO法人earthcube japan(アースキューブジャパン)代表理事、中村功芳氏
  • 国土交通省・観光庁観光産業課長の鈴木貴典氏
  • シェアリングエコノミー協会事務局長の佐別当隆志氏(司会進行役)

以下、トーク内容を要約してレポートします。

佐別当:「今回はそれぞれ立場の違う方に登壇してもらいました。民泊に対する考え方、サービス提供者に求められることを伺います。住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され早3カ月経ちましたが、その中で反省や気付きがあったとお察しします。どんな議論になるか楽しみです」

鶴田:「皆さん、何かしらバトルを期待しているかもしれませんが(笑)。実は僕自身、40歳から地域活性化の仕事をしています。いまは社団法人を立ち上げて、全国の地域づくりのお手伝いをしています。その中で日本旅館協会の副会長として民泊問題を取り扱ってきました。

新法成立にあたっては、旅館・ホテル業界の建前と民泊の在るべき形をどう絡めていくかが難しいところでした。民泊新法ができるとき、国交省の鈴木課長はさぞプレッシャーに感じられたと思います。逆にプレッシャーをかけないと、我々としては不動産賃貸業の言いなりになってしまう懸念もありました。

様々な調整がある中、今の法律ができましたが、地域にいい事は沢山やっていきたいという思いで前進します。本日はよろしくお願いします」

中村:「岡山県倉敷市でゲストハウスの企画・運営を手掛けています。僕たちが捉えるゲストハウスの定義は、『地域の中で一番愛情がある迎賓館。もしくは定年をまっとうした人が飲みに集まる』。街に新しい文化をつくる、街の価値を上げる、地元の高齢者が豊かに暮らせて、次の世代が憧れる仕事をつくろうというものです。

先日の西日本豪雨のときは、ゲストハウス開業合宿の仲間から、被災者の住まい先の確保を求められ、我々のネットワークで安心して住める宿を募集しました。結果、翌日の朝に80件集まりました。『定価だけどご飯を御馳走するよ』と協力してくれる家があります。こうして、宿泊者が迎えられ、地域の人と交流できるゲストハウスのような仕組みができれば地域が盛り上がり、人が集まり、パン屋や本屋などの新しい仕事ができます。

こうした概念が、これからの民泊に求められてくると思います。本日はよろしくお願いします」

鈴木:「国交省で民泊新法を手掛けましたが、今の職場に移ってきたのは昨年7月です。それまでは成田空港の東京国際企画室長を任されていました。移ってきた時点で、民泊法案が国会で成立していました。

法律の中で、様々な立場による議論がありまして、すべてを法に書き込むことができませんでした。残りの細かな決め事を、正直、赴任直後は『どうやってまとめたらいいんだろう』『あまり時間がないな』と感じたものでした。

政省令やガイドラインを決める手続きでは、パブリックコメントが時間をかけて入ってきます。法律を決める過程でご意見いただいた方のコメントを無視して決めるわけにもいきません。ただ最後はひとつのルールに決めなければいけない。しかしどの案を持って行っても、ひとつの業界から「それではゆるすぎる」と怒られてしまい、非常につらかった思い出もあります。

住宅宿泊事業法が6月15日に施行されました。当初は届出数が低調と言われていましたが、2018年8月12日現在で8272件です。この調子が続けばいいと思っています。今回は色々な意見をいただきたいと思います」

 

民泊のあり方 ~ビジネス偏重型と家主滞在型~

佐別当:「鶴田さんは、旅館業界の立場から民泊の現状をどう捉えていますか。率直なご意見をお聞かせください」

鶴田:「家主のいないマンションやアパートの空き室に訪日外国人を泊まらせるというビジネス偏重型の民泊は、本来のシェアリングエコノミーの概念とかけ離れているように感じます。もともと民泊を始めようとしたきっかけは、東京五輪でホテルの客室が足りなくなるという問題からです。

供給量を増やせればそれでいいという考えもありましたが、実は本来の民泊は、家主が滞在しつつ、その中で宿泊者が地域の体験・交流ができることという意味合いがありました。今のビジネス偏重型の民泊をみると、どうもボタンの掛け違いが発生していると捉えざるを得ません。これでは地域で交流がうまれず、現地のためになっていない。

この部分を、法律でうまく表現できていないことに課題が横たわっているのではないでしょうか」

佐別当:「家主滞在型の民泊をもっと増やさなければいけない、というふうにお考えなのですね」

鶴田:「『家主滞在型の民泊ならうるさくいいませんよ』というスタンスを旅館業界は保っています。コンビニで鍵を預かってチェックインできるビジネス偏重型の民泊が大量供給されるのは、少しまずいという認識です」

佐別当:「中村さんにお聞きします。中村さんは、ゲストハウスを通して、地域の質を高める、シェアエコ的な取り組みをされていますよね。ゲストハウス業界にとって、民泊は競合に成り得ますか。」

中村:「僕も鶴田さんとほぼ同意見で、家主滞在型の民泊は大賛成です。むしろ、皆でやったほうがいいと感じているくらいです。

なぜなら、交流型で温かく迎えられる民泊に泊まると、宿泊者は『また帰って来られる場所がある』と安心できます。家主さんが「また帰って来てね」となり人が増えれば、街がにぎわい、民泊が街づくりに貢献します。こうした事例が増えると嬉しいです。

ただ、今怖いのは、ビジネス偏重型の民泊が増えていることです。コンビニで鍵を預かって宿泊する、家主不在型の民泊です。民が民をおもてなししないと、それは民泊になりません。今のビジネス偏重型の民泊は本来の民泊の性質を帯びていないので、そこは分けて考える必要があります」

佐別当:「国交省の鈴木課長は、これから先、どういったアクションを起こそうと考えていますか」

鈴木:「現状のルールは、色々な立場の方のご意見を調整しながら、なんとか辿り着いた形です。一定期間はこのルールの中でやっていきたいと考えていますが、細かいところで改善すべき点は改善していきます。まずは実態を見ながら考えないといけません。

現状は、訪日外国人が増えて消費滞在が増えて来ている印象です。大人数できて割安で安心して泊まりたいというニーズが増える中、こうしたニーズに対して的確にこたえていくことは必要なので、都市部のビジネス偏重型の民泊もある意味必要と思っています。

ただし、どうしたらそれが健全な形で発展していくのかは、現場の反応を見ながら考えていかないといけないと感じています」

佐別当:「ありがとうございます。これからの民泊ビジネスのひとつの懸念材料として、供給過多があると思います。ホテル・旅館・民泊が増えすぎて、客室が余るという懸念です。こうした中で、どういった宿がこれから先、生き残っていくのでしょうか」

鶴田:「鈴木課長がおっしゃる通り、ここ3年で旅館・ホテルの設備投資額がかなり伸びています。今年(2018年)になり落ち着いてきました。どういうことかというと、2020年の東京五輪まではバンバン供給されることになります。その中でいま最も足りていないのは、中村さんもおっしゃっていた家主滞在型の宿です」

中村:「地域の人が喜ぶことを常に考えていれば、その宿の経営は上手くいくと考えています。住んでいる高齢者が喜ぶ宿、次の世代が憧れる宿が増えて行けば、それは持続可能な街になります。家族の食卓の会話の質が上がる宿は、確実に持続可能になります。それが、家主滞在型の民泊なのではないでしょうか」

鈴木:「住宅宿泊事業法ができて、届出を済ませれば宿経営ができます。その意味では、民泊経営の垣根は低くなりました。旅館業法しかなかった時代と比べると、色々なプレーヤーが今後も民泊に参入してくるでしょう。その中で、地域に対する愛情をもっている人が宿泊事業で勝ち残って行けるようなルールをつくらないといけないなと感じています」


まとめ

ビジネス偏重型の民泊が増えた結果、地域と宿泊者に温もりを与えられる家主滞在型の民泊が今後、求められてくるという構図が見て取れました。

こうした民泊が今後求められるという意見は、どうしても利回りのみを重視してしまいがちな不動産業界関係者にとって、競争に勝ち残る上でも、有意義な意見として捉えられるのではないでしょうか。

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