民泊ビジネスから生まれたダイナミックプライシング!不動産にも応用可能な自動化技術とは

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民泊ビジネスから生まれたダイナミックプライシング!不動産にも応用可能な自動化技術とは

はじめに

2018年6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されたことにより、大規模な規制緩和が起き、合法的に民泊が運営しやすくなりました。

これにより、民泊は住宅の新しい活用方法として、不動産ビジネスに新しい可能性を開いたといえるでしょう。新たな収益源の確保だけではなく、民泊ビジネスから生まれる管理自動化や価格決定のテクノロジーが、民泊の枠の内だけには留まらず、既存の不動産業を刷新していくことも考えられます。

今回の記事では、民泊ビジネスの管理・サポートツールを開発、提供しているメトロエンジン株式会社を率いる田中良介(タナカリョウスケ)代表取締役CEOに、最新の民泊テクノロジーについて伺いました。

7割の人件費を削減!?民泊ダッシュボードでできること

【出典】民泊ダッシュボード:https://minpaku-dashboard.jp/lp/index.html

Q:メトロエンジン社のサービス、民泊ダッシュボードについて教えてください。

民泊を運営する事業者や民泊運営の代行業者向けの管理システム(PMS)サービスです。人手がかかる部分をシステムで自動化することによって、コストや時間の削減ができます。

物件管理でいえば、ゲスト(宿泊者)向けのメール対応やゲストがチェックアウトした後の清掃業務発注を自動化します。また宿泊料金を自動で設定する機能で、売上げの最大化をはかることもできます。

その他、ゲストからくる個別の相談や質問対応、部屋の写真を撮影したり、どんな部屋かの説明文を書いたりなど、最初の集客に関わる部分以外のほとんどの作業を自動化できます。

Q:なぜ宿泊料金の自動設定が、売上につながるのでしょうか。

当社の事業の主要な技術領域であるダイナミックプライシングと呼ばれる技術があります。これは単に自動的に適正な宿泊料金を算出して調査・計算コストを削減するだけでなく、需給を予測して価格を変動させることまで自動的に算出するというもの。このテクノロジーのおかげで例えば需要が多くなる時期には価格を高くし、需要が少なくなる時期には価格を安くして需要の調整を図ることができます。タイムリーに最適価格が部屋ごとに算出・反映され、コスト削減だけでなく、結果的に売上の向上にもつながるということです。

あくまで当社による比較ですが、民泊ダッシュボードを使っていただければ7割くらいの人件費が削減できます。また民泊運営にはダッシュボードのような民泊管理システムを使わざるを得ないような背景もあります。例えば、民泊ポータルサイトは、よく知られているAirbnbだけでなく、Booking.comやAgodaなど複数存在します。なので、入居者を募るためにいろんなサイトに横断して物件情報を掲載するケースが多くなっています。しかしそうすると、その内の一つのサイトから予約が入った段階で、他サイトの情報を予約済みに変更しなければいけません。こういった作業は自動化しなければ、管理コストが肥大化し対応がなかなか追いつかない状況なんです。

Q:民泊向けのシステム開発にはいつから取り組んでいますか?

2016年の創業前から取り組んでいます。当時、複数の民泊運営代行業者が立ち上がってきて、民泊市場が急拡大している時期でした。代行業者では受託する物件が増えるなかで、清掃の手配など日常作業がとても繁雑になっていたんです。またオーナー向けに運営レポートの提出も必要になっていました。そういった状況の中で、業務効率化という需要が生まれていた時期でした。

そこからシステムを利用いただいている代行業者の方から、欲しい機能の要望を受けながら改良をしてきました。通算すると数百回の改良を加えています。

Q:具体的に開発・改良の要望からどのような機能が生まれましたか?

例えば、「騒音センサー」ですね。これは一定以上の音量を検出すると、宿泊者に自動でメッセージを送ることができるものです。例えば40デシベルならば注意メッセージを送る。60デシベルなら自動で電話をかけるなど、物件ごとに条件、内容を変えて設定することができます。

この機能が追加された背景には、16年から17年にかけて宿泊者の騒音が問題になり、民泊を撤退する事例が多かったからです。宿泊者が部屋で騒ぎ、近隣からクレームが入り、保健所への通報が相次いで撤退するというパターンですね。騒音が大きな問題になることを防ぐために、この機能が必要だったのです。

スマートロックについては、チェックイン時に番号を入力すれば鍵があくため、カギの受け渡しや立ち会いの必要がない。ホストとゲストの双方にとって利便性が高いです。仮に宿泊者がカギを紛失してしまって部屋に入れないというときも、電話で本人確認ができれば遠隔で鍵を開けるなどができます。わざわざ合鍵を持って物件までかけつけるという手間がいりません。

清掃に関しては、ただ手配をするだけではなく、質も担保するためにアプリを開発しました。これにより、清掃の方が、物件ごとに、その物件のどの部分を確認して清掃を行わなければならないかなどが記載されている清掃マニュアルをスマホで確認できるようになりました。アプリは随時アップデートしており、清掃完了を報告できる機能や、シャンプーなど補充したアメニティを記録できる機能などを次々に追加して、改良を繰り返しています。

Q:コンビニエンスストアでチェックインすることができるそうですね。

2018年の5月に行われた、Airbnb Dayという記者発表会のなかで、当社を含めた36社がAirbnb日本法人の正式パートナー企業として紹介されました。なかでもコンビニエンスストア・チェーンのファミリーマート社にゲストがチェックインするための端末を置くことが大きく報道されました(※1)。あの端末に搭載するチェックイン機能も私たちが作り、Airbnbに提供しています。無人でチェックインができて、物理的な鍵の受け渡しができるのは、便利に思ってもらえるはずです。

民泊新法ではゲストへの対面による本人確認が義務づけられています。ただ、対面と言っても直接会わずに、タブレットを通じてもすることも認められています。コンビニの端末を使えば、遠隔地にいるオペーレータ-につながり、本人確認が完了します。ここでも人手を削減することができます。

※1:この記者会見の様子は、【速報】Airbnb×FamilyMart 業務提携基本合意でSUMAVEでも取り上げました。ファミリーマートの店頭に設置してある『鍵BOX』を介して、民泊ホストと宿泊者(ゲスト)の間での鍵の受け渡しを可能にしたサービスです。

家賃査定にも応用可能!自社開発のダイナミックプライシングとは

Q:民泊のために開発した技術で、不動産ビジネスに使えるものはありますか。

たくさんありますね。例えば、スマートロックを活用した遠隔地からのカギの開け閉めができる仕組みは、賃貸仲介の内覧でもすぐに使えると思います。

よくお問い合わせいただくのはダイナミックプライシングです。先ほどもご説明しましたが、民泊ダッシュボードやホテル向けレベニューマネジメント*サービスで、宿泊費の最適化、自動決定のために使われているものです。この価格設定のための技術はいろいろな業界から使いたいとリクエストをもらっています。なかでも不動産の賃料評価に使いたいというリクエストはよくいただきます。

他にもバーチャル口座サービスを活用した入金確認は賃貸管理で使えば、効率化できると思います。バーチャル口座とは顧客一人ひとりに振込専用の口座を割り振るものです。

この技術を賃貸管理にも応用しています。賃貸管理でも複数の入居者が一つの口座に家賃を振り込みますよね。管理会社は口座を確認しながら、どの部屋の入居者から入金があったかを調べていかないといけません。バーチャル口座と管理システムを連動すれば自動で入金の有無が確認できます。

こういった複数の最新の技術を組み合わせ、不動産ビジネス向けに改良するだけで、かなり需要があるのではないでしょうか。少子高齢化の影響で、これからの時代は不動産を買ったり、借りたりする人が減るでしょう。もちろん、それだけでなく労働人口もさらに減っていきます。そうなると採用も難しくなり人材不足が予測されるため、民泊で使われている効率化の技術は不動産ビジネスでも役に立つと思います。

*レベニューマネジメントとは、在庫を翌日に繰り越せないビジネスにおいて、需要を予測して収入(レベニュー)の最大化を目指し、適切な販売管理を行うこと(日本大百科全書(ニッポニカ)より引用

Q:ダイナミックプライシングについて詳しく教えてください。宿泊料金を決めるために使われているとのことですが、周辺にあるホテルの宿泊費用を調査して導き出すのですか。

もちろん競合するホテルの周辺相場は調べますが、技術全体はもっと複雑なものです。ダイナミックプライシングは民泊だけではなく、ホテル向けにも提供している技術です。

例えば、ある特定の日に、東京都内に韓国人観光客が何人、旅行に来るのかを導き出します。過去には何万人の韓国人観光客が来たというデータをもとに、韓国の休日や韓国国内の行事、東京で開催されるイベントなど旅行需要に影響したかもしれない要素を調べて、学習していきます。そこに季節や曜日、その日に開催されるイベントなどの要因を組み合わせていくことで、ある1日に東京都に何万人の韓国人観光客が宿泊するだろう、といった予測をするのです。

これを1カ国ではなく、現状では10カ国くらいまでを予測しています。それに国内旅行者の需要にも同じように影響を与えそうな要素を組み合わせて、計算していきます。こうして算出した国内及び海外の需要に、周辺の宿泊施設の宿泊費用など、自社のホテルとの競争力をふまえながら、需要と供給を比べて、取りうる最大値の需要をとっていこうという考え方のものです。競合するホテルの価格は単なる一要素でしかありません。

Q:予約が入っていなくても、需要はまだあると予測できていれば値下げしなくてもいい。いずれ埋まるはずだと考えて販売プランが立てられますね。

あえて予約を取らずに売り止めするというやり方もできます。競合する宿泊施設を安い料金のまま売り切らせてしまい、供給がゼロになってしまった状態から、高い設定で予約をとるという戦略もとれるわけですね。

単純化して話をすれば人気アイドルのコンサートがあるという情報を知ったうえで、コンサート会場周辺の他のホテルの空室がなくなってから10万円で売るということもできます。もちろん、そこまではホテルの方が望みませんが(笑)

Q:賃貸マンションでも家賃査定は重要です。応用したいというリクエストが多いのもよくわかります。

賃貸住宅ではホテルや民泊に比べると流動性が少ないので、難しい部分がある。一度、入居があると約2年間は入れ替わりがないですからね。部屋を選ぶ際の決め手のなかに、好き・嫌いという感情が大きく関与しています。しかし、個々の人の感情についてのデータはありませんから、好きか嫌いかなどは予測が難しい。だから、駅徒歩何分や築年数などのはっきりしたデータをもとに、ひとつの提案価格として機械で算出して、もっと細かい部分は人の手で調整していくという使い方は可能だと思います。

ダイナミックプライシングの応用は急速に進んでいて、当社はコインパーキングや航空券、レンタカーなどでも価格設定の開発を進めています。

Q:そういった新しいサービスは社内で開発するのでしょうか。

すべて自社で開発しています。当社には、データサイエンティストやエンジニアが合わせて50人以上在籍しています。全社員が80人ほどですので、社員のほとんどはデータサイエンティストやエンジニアですね。

Q:不動産の最有効活用という見方もダイナミックプライシングの考え方でわかってくるのでしょうか。

このエリアで民泊経営をやれば儲かるだろう、というのは現状でも推定できています。そういう情報を投資ファンドの方にお話ししたら、ダイナミックプライシングの査定をもとに本当に賃貸マンションを2棟購入していましたね。

Q:そういう情報技術の確立は不動産業全体に影響する話ですね。個別のエリアや物件だけでなく、不動産マーケット全体の傾向を推定したり将来予測をしたりはできますか。

宿泊施設の建築計画では、かなり予測できています。例えば民泊を含めた住宅宿泊市場を今から建築するのであれば、個人的には、2つの方法しかおすすめしません。まず、平均客室単価が低い単身者向けの高級感のあるカプセルホテルなどが一つ。もう一つは、4~5万円まで平均客室単価を高くして7~8人の家族で泊まれる部屋を提供する宿泊施設です。

ツインベッドが置いてある2〜3人向けの部屋は、すべてビジネスホテルに客が取られています。また、私が調べる限りでは、今後の宿泊施設の建築計画はほぼすべてがビジネスホテルです。それらのホテルが建築されれば、ほぼ需要は足りてしまいます。だから、最近はホテルの建築計画について相談されると、ツインの部屋2つを1つにして4~5人の家族が一部屋で泊まれるような部屋を作ったほうがいいとアドバイスしています。

平均客室単価を低くするか、多人数宿泊のどちらかに振り切るしかない。実際に、平均客室単価の低いカプセルホテルは経営が順調だとデータで表れています。多人数宿泊に関しては、ホテルの競合が少ないという現状です。スイートルームならばあるけれど、一人単価で計算すると割に合わないんですね。なので、民泊でも7人以上泊まれる部屋がものすごい利益を出しています。参入の初期費用が高額なため、競合もほとんどおらず、ブルーオーシャン(未開拓の市場)と言えます。

でも、こういった思い切った事例は過去例がほとんどないので、どうやって始めたらいいのかわからない。現状ではみなさんまだまだ手が出せない状況のようです。

Q:マンションや賃貸アパート建築などの住宅分野でも言えるかもしれませんね。エリア内に競合がたくさんあっても建築が続いていきます。エリア内での住宅需要なども、ダイナミックプライシングの考え方に応用できるものでしょうか。

住宅の需要は、現状では実はかなり難しいんです。限られたエリアの住宅需要を推定するためには、将来的な交流人口と居住人口を予想しなければいけません。

*特定のエリアを訪れる人のこと。エリアに住む人のことは居住人口と呼ぶ。

地域に大型のショッピングモールができれば交流人口がいっぺんに増えます。そういった将来の建築計画がすべてわかったうえで、都市部であれば他の地域からの流入がどのくらいあるかを計算に入れなければいけません。外国人労働者に対する国の政策が変われば、それも大きな変化を産みます。

こうした事情が複雑なので、人口に関しては今までの実績をもとに将来を定量的に予測することは難しいです。

タワーマンションが作られて、人気になった武蔵小杉は駅徒歩3分の位置のはずなのに改札までの実際の移動には何十分もかかるほど人口が集中して問題になっている。タワーマンション建築時点での予測人口と、駅のキャパシティ状況の変化に関しては、実績の数値のみで予測は建てられたかもしれません。ただ、人口の予測は本当に難しいと思います。

Q:正確な推定のためにはデータの収集が必要です。その部分で、不動産業界は遅れているという声もあります。

そうですね。データは舞い降りてくるわけではないので、集めないといけません。本質的にはわかっていても、どうすれば良いのかわからない部分が大きいのかもしれませんね。

Q:データを活用したテクノロジーについてお聞きしてきました。かなり先端的な話でしたが、一般の不動産会社にもテクノロジー全般による恩恵はありますか。

テクノロジーがビジネスに及ぼす影響は、課題解決型に絞ると、業務改善による人件費削減と、収益の改善の二つです。不動産業界に限ると、業務においてアナログな要素が多い。業務改善の余地は多そうです。

なかでも、ダイナミックプライシングによる価格設定が本格的に使えるようになれば、収益改善になるかもしれません。先ほどの通り、現状ではまだ不動産ビジネスへの応用は難しくてあくまで提案の一つですが。

不動産に限らず今後は、テクノロジーによる意思決定が必要になるはずです。データを集めました、分析しました、では最後に人間が分析を読み解いて意思決定をしなければいけません。だから、テクノロジーでデータを読み解き、自動で意思決定する必要がある。

当社がホテル向けに提供しているサービスでは、価格が推定できたらポータルサイトに掲載している価格を自動的に変更してしまっています。つまり、テクノロジーで価格を算出するだけでなく、価格を変更するという意思決定も行っているというわけです。そういった点までテクノロジーが進歩していけば、大いに恩恵があると思います。

Q:最後に不動産テック全般についてはどう考えていらっしゃるか教えてください。

不動産業界は大きなマーケットです。少しの改善でも、相当な価値になる。不動産テック全般がニッチな改善や付加価値を提供する企業が多いように思います。適正売買価格を導くツールや、AI投資分析を行うツールなど、それだけでも市場を独占できれば、上場できてしまうほどの売上げになる点が面白いですね。

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