『キマRoom! Sign』で申込&契約の業務支援!広島から不動産テックを盛り上げる!

- 業務支援サービスに力を入れているセイルボートが新サービス『キマRoom! Sign』をリリース
- 『キマRoom! Sign』は、手書き感があって筆跡を確認できるから審査書類もOK
- 紙で管理された膨大なデータを電子化。アンケートの電子化やCRM連携も!
「“つなげる”で、不動産賃貸市場をもっと、先へ」をミッションに掲げ、不動産賃貸業務の生産性向上に取り組む企業があります。2011年に賃貸業者間流通システム『キマRoom!』を、2017年8月28日には電子申込顧客管理ツール『キマRoom! Sign』をリリースした株式会社セイルボートです。
今回は、そのセイルボートの代表取締役・西野量(にしの・りょう)氏に、これまでの取り組みと、新サービス『キマRoom! Sign』についてお伺いしました。
Q:まずは、セイルボート立ち上げ時のことを教えてください。
会社の立ち上げは、2010年です。広島でリノベーション関連の事業を始めました。そのときに、多くの、不動産賃貸の仲介会社と仕事をしました。そのうち私は、不動産賃貸業界の業者間流通が整っていないことに問題意識を持つようになったんです。
不動産賃貸の物件情報は、管理会社と仲介会社が電話やFAXでやり取りし、その情報を管理している状態でした。作業は非常に手間がかかります。
今でこそREINS(レインズ)などのサービスが発達していますが、7年前の広島では、不動産の流通システムが未発達でした。そこで、「業者間をつなぐような流通システムがあれば、業者の手間を大幅に省けるのでは」と感じ、『キマRoom!』がはじまりました。
Q:サービスがリリースされて6年ほどたちました。現在の導入実績はどのくらいでしょうか?
約1,000社にご利用いただいています。『キマRoom!』は、サービスをリリースした直後に不動産会社から好評を得られたこともあり、2014年には首都圏へ進出しています。しかし、最近は難しさを感じていますね。
多くの不動産会社は、不動産ポータルサイトと連動し、物件情報を入稿できるコンバーターというサービスの導入を急速に進めています。同業他社が勢いを増している印象もあり、数の減りつつある新規のお客様を同業他社で取り合うような肌感覚なんです。「シェアを拡大するための余地が、あまりないな」と感じています。
Q:次の一手は?
新しいサービスをリリースしました。
「閉塞感を打ち破れないか」と考えていたときに気が付いたんですが、不動産会社の業務の一つである、申込や契約の業務支援分野に参入しているプレイヤーが少ないんです。
電子申込書や電子契約などのサービスは、日本社会に増えています。「不動産業界でも、ITを使った業務効率化の波は大きくなる」といった話題は、よく耳にしました。
『キマRoom!』のノウハウを生かした新サービス
Q:ITを使った業務効率化のなかで、申込や契約の分野を選んだ理由はなんですか?
最大の理由は、『キマRoom!』のノウハウを生かせる分野だと感じたからです。
不動産業界の申込や契約の分野は、7年以上前に管理会社と仲介会社がしていた物件管理の業務と同じように、業務支援サービスが未発達でした。たとえば、管理会社が100社あったとします。仲介会社は、管理会社100社分の申込書と契約書を一つひとつ取り寄せなければいけません。ものすごい手間のかかる作業です。運用ルールが不動産会社によってバラバラだったため、統一されたプラットフォームを作れば、手間を改善できると考えました。この考え方は、業者間流通システムである『キマRoom!』のサービスコンセプトと同じです。
『キマRoom!』では、不動産会社ごとに異なる物件情報のフォーマットや、各社の運用ルールを統一しました。このノウハウを生かした、弊社の新しいサービスが、『キマRoom! Sign』です。
Q:どんなサービスなんでしょうか?
入居申込などを電子化した、電子申込顧客管理ツールです。タブレット端末などに電子ペンで文字入力をし、仲介会社はデータ送信をするだけで、管理会社へ情報を伝えられます。
Q:2017年8月リリース後の反響はいかがでしょうか?
悪くないですね。現在は数社に申し込んでいただいているのと、大手のデベロッパーや電鉄系の企業などにも検討してもらっているところです。
筆跡確認もOK!タブレット端末と電子ペンで手書きに迫る
Q:『キマRoom! Sign』の最大の特徴は何ですか?
文字認識の技術ですね。大きく二つの特徴があります。一つ目は、文字の入力と認証が同時に進む点です。二つ目の特徴は、紙に書くような自然な書き味です。
文字の入力と認証が同時に進むとは、たとえば、「西」の字を書く場合にペンがどの向きに動いているのかを一画ずつ読みとっていくイメージです。この文字認識の技術は、一年かけて開発しました。議論を重ね、開発や検証にも時間を割いたので、品質の高いサービスを開発できたと自負しています。
Q:二つ目の特徴である、紙に書くような自然な書き味についても教えてください。こだわった理由はなんでしょう?
筆跡の確認ができるサービスにしたかったんです。紙に書かれた文字には筆跡があり、賃貸契約の審査でときおり重要な役目を果たします。これは手書きの契約書のメリットです。
このメリットを『キマRoom! Sign』でも引き継ぎたかったため、タブレット端末と電子ペンという組み合わせですが、手書き感にこだわりました。入居者の負担を増やすことなく、「電子契約書だと筆跡が一致しないので審査が通らない」といったトラブルも未然に防げます。タブレット端末に入力された文字をデータとして管理する工夫もしました。
Q:導入企業の声はどうでしょう。こだわった文字認識の高い精度や、自然な手書き感の反応は?
お陰様で好評です。管理会社からは、「仲介会社から送られてくる契約書類の入力業務がなくなった」「筆跡確認できる点は審査で安心できる」などの声をいただいています。
新しいサービスを業界へ提案するときに、「既存のサービスや作業のメリットをどう転換させるか」を考えることは、とても重要です。それは既存の業界へ参入する私たちの努めの一つであり、『キマRoom! Sign』が導入企業様に好評である要因の一つでもあるとも考えています。
活用に困る紙のビッグデータ。新たな解決策『キマRoom! Sign』
Q:仲介会社からすると、「管理会社と違うシステムを使うことに抵抗がある」などの消極的な声が挙がりそうですが、実際のところはどうでしょう?
そこは正直、非常に難しいところですね。でも、『キマRoom! Sign』には別視点の突破口があると思っています。突破口とは、仲介会社の抱える大きな課題の一つです。
たとえば、ある仲介会社の年間の賃貸契約数が6万件だとします。問い合わせの数はその約10倍とされているので、問い合わせの数は合計で60万件です。60万件のうち、契約に至らなかった54万件の個人情報は、ほとんどの場合は管理されていません。54万件の個人情報はビッグデータであり、このデータをうまく生かせていない点は、仲介会社の抱える大きな課題の一つです。
原因の一つは、個人情報が紙データなので、管理の手間が膨大なことです。そもそも6万件の契約データを紙で管理するだけでも大変なので、54万件の個人情報を管理する余裕は、仲介会社にありません。
Q:つまり、『キマRoom! Sign』を使うことで、6万件の個人情報が管理しやすくなるだけでなく、これまで着手したくてもできなかった54万件のビッグデータを管理することもできる、ということでしょうか?
その通りです。実際に、「生かしきれない紙のビッグデータがたまっていく一方で、もどかしい」と話していた大手の仲介会社には、『キマRoom! Sign』が大変に好評です。
仲介会社の業務には、CRM(顧客管理システム)を用いた反響獲得、来店時アンケートがあります。『キマRoom! Sign』では、そのCRMとの連係やアンケートの電子化が可能なため、個人情報の管理にほとんど手間がかかりません。
目指すのは、不動産がオンライン上で決済できる世界
Q:『キマRoom!』や『キマRoom! Sign』のサービス運用を通じて、西野さんが感じる業界の課題などはありますか?
繰り返しになりますが、不動産業界のインフラ整備ですね。整っていない部分は、まだ多いと感じています。ECサイトは、買い物するときにオンライン上で決済までできますよね。不動産のポータルサイトでも、そこまでできていいはずだと、私は考えているんです。
私たちは、自分たちの不動産テックサービスを、“決済ができる世界を実現するための土台整備”のように感じています。『キマRoom! Sign』をきっかけに、今後も新しいサービスを展開していきたいですね。
株式会社セイルボート 代表取締役 西野 量(にしの りょう)氏
経歴
関西大学卒業
1999年:オリックス(株)グループ入社後、不動産ベンチャー入社
2004年:(株)リクルート入社
2010年:同社退職し起業