360度カメラ「THETA」で見える世界。今求められる不動産情報の質の高さとは?

- 不動産業界のVRコンテンツ作成ツールとしてリコーが発売したTHETAが活用されている
- インターネットで個人で得られる物件情報が増え、顧客ニーズは360度写真など質の高い情報に
- 不動産会社としては、内見前後や新人教育の場面での活用に期待ができる
2016年はVRに非常に注目が集まり、一部では「VR元年」と呼ばれています。
その理由は、Facebook子会社のOculus VRが2016年3月に発売したヘッドマウントディスプレイ"Oculus Rift"、ソニーが2016年10月に発売した"PlayStation VR"、この2つの存在が大きいと考えられます。
不動産業界では部屋の内観をVRコンテンツで提供することに注目が集まっています。そのVRコンテンツを作成するツールとして、リコーから発売されている"THETA"が数多くの場面で活用されています。ここではTHETAの基礎知識、活用するにあたっての課題点やメリットをお伝えしていきます。
「THETA」とは?
THETAとは、2013年にリコーから発売された上下左右全方位360度パノラマ写真を撮影できるカメラです。製品は片手に収まるほどコンパクトで、簡単に撮影ができるので気軽に楽しめます。発売開始以降も多くのモデルが発売されており、写真だけではなく動画も撮影することができます。
2014年10月にはTHETAで撮影したデータを、Webサイト上に表示するサービス"THETA 360.biz"を法人向けに開始しました。さらに2017年に入ってからTHETA 360.bizでの撮影・制作受託サービスの提供を開始し、観光宿泊、ウエディング、家具・インテリア業界などで活用されています。不動産業界のVRを活用した内覧サービスの多くはTHETAで撮影された映像となっています。
顧客が求める不動産情報の変化
インターネットが普及する以前、物件情報は雑誌やフリーペーパーなどの誌面上で確認するのが主流でした。その頃の個人で得られる情報は、賃料や立地などのわずかな文字情報と、限られた枠に掲載された間取り図、数枚の外観と内観のみです。そのため部屋探しをする時は「とりあえず店舗に行って、内見してみよう」と考えるのが普通でした。
しかしインターネットの普及により、店舗に行かずに個人でも物件の詳細情報が手に入るようになりました。不動産情報サイトが増えはじめ、不動産会社は顧客に選ばれるために情報の正確さ・質が求められるようになってきています。そのため、物件情報をただ掲載するだけでなく、動画や360度写真など、より鮮明な情報を伝えることが重要視されています。
導入が進む「THETA」と考えられる課題
前項で述べた通り顧客が物件情報に求めることは「正確さと質の高さ」です。顧客ニーズの変化を受けて「どうやって物件の魅力を伝えるか?」「写真を綺麗に撮るより魅力的な伝え方はなんだろうか?」と考える不動産会社が増え、徐々に360度写真を物件情報に掲載するようになってきました。
しかし、上手く撮影ができておらず、顧客に悪印象を与えてしまう事例も見受けられます。360度写真を見る時や、VRコンテンツ上で内見をする時に、写真自体がイマイチだと、顧客は入居したいという気持ちを失ってしまいます。とはいえ日々の業務の中で物件に出向き写真を撮影、その十数枚の写真を編集、入稿するのは骨が折れる作業でしょう。THETAでの撮影方法や写真の編集方法など、ツールの使い方を懸念する不動産会社も多いと考えられます。THETAで撮影する時間は一物件あたり十分ほどと言われていますが、一番時間がかけるのは、撮影したものを「整理する」時間です。
"THETAの使い方を学ぶ時間的コスト"や"撮影写真の質の高さ"などの課題はありますが、これらの問題を解決しようと、前半で触れたTHETA 360.bizでの撮影の制作受託サービスや、写真の編集を簡単にできるツールも数多く登場してきています。
360度写真・VRコンテンツがもたらすメリット
THETAによって撮影した写真を物件情報に掲載することで、不動産会社が得られるメリットは大きく以下の3点が考えられます。
- 内見前の事前確認・内見後のフォローの効率化
希望者が内見に行く前に、VR上で部屋の雰囲気を掴むことができます。顧客が気にするポイントを事前に把握することができるので、来店時に接客する時間の短縮や、リアルで内見する物件数の減少による業務効率化にも繋がります。また、内見の後「あそこってどうだったかな?」「コンセントの位置ってどこだっけ?」と顧客に聞かれた時も、撮影したデータを見直すことでその場に行かずに確認することができます。 - 新人の教育やシミュレーション
営業マンの新人教育として、上司の内見に同行する場面。VR上の内見を活用すれば、移動時間が短縮することができます。さらに上司のVRの内見の記録・録画データから、顧客とどのように接しているのか学ぶこともできます。新人が初めて内見に行く時にも上司と事前に内見のシミュレーションをすることができるなど教育の場面での活用も期待できます。 - ホームステージングと組み合わせ
ホームステージングと組み合わせたVRコンテンツ上に家具を配置するサービスも登場しています。空室の内見時にイメージできない家具配置を、内見後に提案することで顧客に安心した意思決定をしてもらうことができます。
まとめ
文字情報と数枚の断片的な写真だけで成り立っていた不動産情報の歴史は、短い期間の中で激変しました。物件情報を伝えるツールが360度写真や動画と増えてきたためです。
360度写真の掲載された物件は、顧客からすると24時間365日いつでも仮想的な内見ができるようになります。不動産会社は業務効率化を図りながら、顧客に物件の隅々まで伝えることができるTHETAを今後さらに活用していくでしょう。
間取りや断片的写真と同じように、全ての物件情報に360度写真が掲載される日はそう遠くないかもしれません。