【業界最前線】アメリカ不動産市場で、潜在顧客の獲得方法とは

- アメリカではMLSというウェブサイト上にほぼすべての物件情報が公開されている
- 物件の購入・売却の際の依頼先が「日本では不動産会社」、「アメリカでは個人のエージェント」
- SNS、インターネット上で行うブランディングやイメージ戦略がエージェントの成功を左右する
近年、不動産業界でもインターネットを活用して潜在顧客にアプローチする企業が増えてきました。一方でまだまだインターネットを取引の補佐的なツールとして捉えている風潮があり、未だに対面での営業を重視しているのが実情です。
では、インターネットビジネスの最先端をいくアメリカでは、不動産業界でどのようにインターネットが活用されているのでしょうか?
情報の透明性を重視するアメリカの不動産市場
アメリカ不動産市場で最も特筆すべき特徴は、ほぼすべての物件情報がインターネット上にオープンになっていることです。
アメリカには全米リアルター協会(NAR)が管理するウェブサイト、MLS(Multiple Listing Service)があり、MLSには全米の不動産協会に登録されている物件の情報が、不動産業者だけでなく、消費者にも一部閲覧できる状態で掲載されています。日本にもREINS(レインズ)という国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営するネットワークシステムがありますが、REINSは不動産業者しか閲覧ができません。
MLSでは記載しなければいけない情報が事細かに指定されており、価格・広さ・写真はもちろん、登記情報・修繕・売買履歴及び過去の価格データ・災害リスク・財務情報まで、ありとあらゆる情報を入力しなければなりません。こうした詳細情報を公開する事で情報格差をなくし、不動産取引の透明さ、公正さの仕組みを持っているのがアメリカの不動産市場の大きな特徴と言えます。
顧客獲得の要はエージェントの力量と信頼
物件の購入や売却をするとき日本とアメリカで決定的に違うのは、日本では消費者が不動産会社に依頼するのに対し、アメリカでは不動産会社ではなく“エージェント”という個人に依頼する点です。
アメリカのエージェントたちは、日本の不動産会社にあたるブローカーと契約していますが、基本的に成功報酬制のため、いわばフリーランスの営業マンたちが自分の力量と信頼で顧客を獲得して物件を紹介しているような形態です。エージェントたちは各々でさまざまな工夫をして顧客を増やす活動をしています。ただ前述のようにアメリカでは基本的に物件情報をすべての業者に公開しているため、それ以外の部分でいかに同業者との差別化を図れるかがエージェントの成功を左右します。
潜在顧客をいかに惹きつけ続けるか
どんな売れっ子エージェントだとしても、立場は一般人と大きく変わりません。一個人がより多くの顧客を獲得するためには常日頃から人々にとって有意義な情報を配信し続け、「物件を購入・売却したくなったらこの人に相談しよう」と思わせる事が重要です。そのため、アメリカのエージェントたちは自分が扱っている物件の情報を常に更新し続けるだけでなく、自ら一つ一つの物件へ出向いてビデオを撮影したり、特定地域の不動産価格動向と展望について記事を書いたりと、あの手この手で潜在顧客を集めるためのコンテンツを発信し続けています。
他にもエージェント自身のブランディング戦略としてSNSのライブ配信の中で、物件周辺のレストランを紹介したり、地域のイベントのレポートをしたり、情報発信の手段が様々です。
Facebookをはじめアメリカでは浸透しているLinked inなどSNSはエージェントにとって非常に重要なツールとなっています。
一人の人間が住宅の購入・売却を考える回数は多くありません。賃貸ですら2年間のサイクルが一般的でしょう。しかし、そのタイミングを逃さないためには、常日頃から潜在顧客を惹きつけ続ける取り組みが何よりも大切です。これはアメリカに限った事ではなく、日本の不動産業者にも全く同じ事が言えるのではないでしょうか。
企業としての戦略だけでなく、個人のアイディアや魅力を押し出したイメージ戦略は重要です。インターネット・SNSの普及が進むいま、潜在顧客を多く惹きつける営業担当者を何人も抱えるスタイルが不動産業界に革命を起こすかもしれません。