DX推進企業のリアル「現在地と今抱える課題」

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DX推進企業のリアル「現在地と今抱える課題」

2022年7月に東京ビッグサイトで「賃貸住宅フェア2023」(株式会社全国賃貸住宅新聞社主催)が開催されました。今回はフェアで行われたセミナーのうち「DX推進企業のリアル「現在地と今抱える課題」」をレポートします。講師はプロパティエージェント株式会社の中西聖代表取締役社長と、同社の経営企画部の佐藤孝専任部長です。同社は19期連続増収増益の企業です。

BSの改善からDXに目をつける

プロパティエージェントでは、2016年5月にはSFAを導入し、CRMと効率化を目指しましたが、その道のりは簡単ではなかったと同社社長の中西氏は話します。「チームをつくったものの専門的な人材がいるわけではない。何から始めればいいのかわからず、SFAの導入に踏み切った。これは良くなかった。結局、不動産もITも詳しいというハイブリッド型の人材が必要なのだが、そういった人材は不動産業界にはなかなかいない。早くから始めたといっても、失敗の連続だった」と振り返ります。

賃貸住宅フェア2023 プロパティエージェント株式会社の中西聖代表取締役社長プロパティエージェント株式会社の中西聖代表取締役社長

それから2年後である2018年、「当時は不動産投資の会社でいくつかトラブルが起こり、メディアなどでも話題になっていた頃です。私は急速な成長は難しいと判断し、企業の足踏みダイエットとしてBS(貸借対照表)の改善を目指しました。コストの削減ですね。その一環として、自動化できるものは自動化していこうと3名でDXチームを起ち上げました。総務と情シスの担当者らによる兼務プロジェクトでした」。

ロードマップを描く重要性

「最初にとりかかったのは、会社全体を横断して見渡すこと。全体像を把握し、その中でどこをどう効率化していくか。そのロードマップを描きました。DXの基本は、それで結局どうなるのか? ということに尽きます。つまりそれが工数の削減や費用の削減につながるのか。アップセルとクロスセルはどう向上するのか。下げるのか上げるのか。そういうことでしかありません。そのために全体のロードマップを一気に描きあげ、そこから考えていくようにしたのです」

しかし、急ごしらえのチームでは限界が生じます。2019年に、今回のセミナーに同席した佐藤氏が同社に入り、ロードマップを見直すことになります。佐藤氏はソフトバンクに入社し、主にセキュリティソリューション事業を担当領域とし、その後O2O環境の構築やオンラインビジネスモデルの企業・構築に携わり、現在はプロパティエージェントでDX推進を主導しています。

佐藤氏は「当時のロードマップはファジーなものが多かった。こんな部分で楽(らく)したいといった抽象度の高いものが目立っていました。ロードマップはいま困っていることを改善したいというリストとは違います。企業が目指すべき道のりを具体的に示す役割を果たします。このままでは電子化が目的になってしまうと懸念し、見直しをかけました。気をつけなくてはいけないのは、目的と手段が変わってしまうこと。「電子化あるある」ですが、目的から目を離してしまうと、電子化でお金がかかってしまうだけになるのです」。

賃貸住宅フェア2023 プロパティエージェント株式会社経営企画部の佐藤孝専任部長プロパティエージェント株式会社経営企画部の佐藤孝専任部長

中西氏も「電子契約もまわりの環境を整えないまま推進しても、仲介や管理会社は困ってしまいますよね。今でも入居については電子契約、でも保険会社との契約は紙になるみたいなことは多い。混在している中で、経営者としてどこを電子化したら従来よりも工数削減できるかという「定量化」こそ判断の基準となる」と話します。「例えば、ある作業が1カ月あたり50時間かかっていたとします。この50時間の作業のうち、デジタル化すれば2時間削減できます。そして、その2時間の削減のためには毎月5万円のサービス利用料がかかります、ということであれば私は採用しません。逆に、弊社でも多い更新通知の業務などは、いまほとんど人の手を使っていません。これは50時間の作業が1時間になるパターン。GoogleフォームとRPAで提供し、コストは月3万円程度。これはデジタル化する意味がある」と話します。

同社では、定量評価を徹底的に行い、引き分け以上ならデジタルの導入を決定するという明確な判断基準があるといい、引き分けでもデジタル導入になる理由として「機械は365日24時間働き病気にもならないから」と説明します。

効率化という宣伝文句に疑問符を持ち、常に定量化し判断する意識を

中西氏は「DX化で一番やっちゃいけないのはこれやったら効率化するのでは? という発想」と話し、これは「思考停止ワード」と警鐘を鳴らします。「効率化するっていうのも定量化しないと駄目でしょう。CRMツールについても、お客様にアプローチして、成約にいたらなかった。しかし、1年後、メールがいき営業マンにアラートが鳴って連絡をする。その上で、何パーセント見込みが増えて、何パーセント契約が増えて、費用はいくらかかるのかなどを考えていくべき。そのために2年程度は我慢する必要がある。最初は間違いだらけの定量データが出てきます。しかし、日々繰り返すことでより真実に近い定量データが出てくるようになる。大切なのは定量評価をしていこうという企業全体のマインド」。

佐藤氏は「日本企業はPDCAのうち、PDが好き。やってみたいが先にでる。でも、企業経営で重要なのはCAの方。中西が言ったとおり何においてもCAの繰り返しが精緻な成果をだすことにつながる。私も中西も常に現場に対して、そういう意識を持つように伝えています」。

中西氏は最初から成功したいという思いよりは、失敗してもいい。むしろ失敗をしたほうがいいという考えを持つことが経営者側に求められると話します。「DXは成功だけではなく、何が出来なかったのかという失敗を、どう活かすかがポイントになってくるのではないでしょうか」。

社内のDXチームは自社にとって優秀なメンバーを揃える

セミナーの中で「社内でDXチームを組むにあたりどのようなチーム編成がいいか」という質問が出ました。そこで中西氏は「ITに詳しい人という理由でチームに入れては失敗する」と回答。「2016年、2018年の失敗はまさにこれ。ITに詳しい人は手段に詳しいだけ。経営において大事なのは、目的をどう達成するのか。そのためには自社のトップセールスや有望株にDXを含めて改革について担ってもらうべき」と経験に基づいた持論を語ります。「不動産業界のことをわかって、そこで成績をだしている人間の方が、自社の課題とその解決策は見つけやすい。新しいこと、わからないことにも取り組める好奇心とコミュニケーション能力の高い人。すなわち、どこでも成果をだせる人間にやらせるべき。そのために、彼なり彼女なりの成績が下がり、一時的に会社に影響が起きたとしても、定量的な評価で彼ら彼女らにやってもらうべきと判断すれば、お願いしていくことが結果的に企業の持続性を高める」。

単なる詳しい人だと木を見て森を見ずになってしまうが、企業のDX推進は森を見ていく必要があり、そのためには詳しいだけの人は不要と話します。

「企業におけるDXは泥水をすするような地道で地味な世界。コンサルタントですというような人や自社の製品を売るだけだったベンダーのような人には推進はできない。社内の人材だけで難しければ、利害関係のない外部の詳しい人に一部頼るのもいいでしょう。ただ、その声も鵜呑みにしない」と中西氏は「これは自戒もこめてですが」と補足しながら話します。

「DX化という言葉は、目的ではありません。私も含めすべての経営者が求めているのは生産効率の向上ではないでしょうか。思考停止ワードにだまされず、工数を下げるなど定量化を常にしていくことが大事です」と話しました。同社は新しい取り組みを積極的にしてきたことで、採用面でもメリットが出てきていると説明し、業界として魅力的なマーケット創出をしていこうと参加者に呼びかけました。

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