これから選ばれる不動産賃貸の“管理会社・仲介会社”とは?

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これから選ばれる不動産賃貸の“管理会社・仲介会社”とは?

2021年10月7日、8日に東京ビッグサイト青海展示棟で「住宅ビジネスフェア2021」が開催されました。開催中に行われた特別講演「選ばれる“管理会社・仲介会社”【不動産賃貸管理業・仲介業の今後】」をレポートします。

オンラインとリアルの「使いドコロ」

講演のモデレータはFreedraw株式会社の高柳裕司氏(以下、高柳氏)、パネリストとして公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会長の塩見紀昭氏(以下、塩見氏)、ハウスコム株式会社代表取締役社長 執行役員の田村穂氏(以下、田村氏)、株式会社S-FITの代表取締役社長の紫原友規氏(以下、紫原氏)、誠不動産株式会社の代表取締役社長の鈴木誠氏(以下、鈴木氏)。

高柳氏より最初のトークテーマについて以下のように語られ、ディスカッションが始まりました。
「SUUMOリサーチセンター2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏) のデータを見ても、オンラインの活用はなかなか進んでいない印象です。(オンライン上で完結する賃貸契約についての認知率は上昇しているが、オンライン内見の実施率は低い。)実際の利用状況の差分についてどのように感じられますか?」

これに対し、田村氏は「やはり内見はリアルが重要だと捉えています。ただ、お客様がリアルで物件を見る数は1回の契約に対して減少傾向です。これはつまり、オンラインで情報を収集して、絞り込んでこられているから。その点で、オンラインの情報提供もまた重要といえます」と話します。


ハウスコム株式会社代表取締役社長 執行役員の田村穂氏

紫原氏も「オンラインの情報提供や関係性の重要度は増してきています。弊社ではインサイドセールスチームをつくり、内見までの物件情報のやりとりをオンラインで行なう専門のチーム体制を敷いています。現地での案内といった実際の接客になると、営業が引き継ぎます。コロナ禍で考えた新体制ですが、アフターコロナでも有効な体制だと考えています」と話します。同氏の会社では、それほど物件選びを急いでいないお客様には、インサイドセールスチームが対応し続けていく仕組みだそうです。


株式会社S-FITの代表取締役社長の紫原友規氏

紫原氏はさらに「オンライン内見は法人のお客様には一定の効果があると思います。遠方から転勤で来る方や、新卒の方など。オンライン内見のニーズは今後も一定数以上あるのではないでしょうか」と法人需要にも言及。

鈴木氏は「物件探しのオンライン化は、Web申し込み、集客には非常に有効だが、やはり物件自体はリアルで見るべきという考えです。VR内見やオンライン内見には反対派です。実際に物件に行かないとわからない雰囲気というものがありますからね」と自身のスタンスを示しました。


誠不動産株式会社の代表取締役社長の鈴木誠氏

こうした仲介事業者の代表たちの会話を聞き、管理会社側の立場である塩見氏は「オンラインがいい、リアルがいい。それぞれあってもいいと思っています。ただ、コロナ禍がなければ進まなかったことが、ここ1〜2年で一気に進んだ印象です。」と、ユーザーのニーズの変化や、それに伴う事業者側の環境変化を理解しつつも、「私自身、管理会社を営んでいますが、その点でいうとテレワークはなかなか進まなかった」と、それを自社に導入する難しさも語りました。


公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会長の塩見紀昭氏

これに対し、田村氏や鈴木氏も同意。田村氏は「緊急事態宣言期間は3割くらいの出社で、あけた今は5割くらい出社している」と話し、鈴木氏は「会って目を見て話したい」とテレワークについては否定的です。

紫原氏だけは「業界的には、やはりそう(テレワークに否定的)だと感じますが、社員が選べる仕組みを会社としては用意していきたいです。そういう意味では私はテレワーク推進派です。従業員がテレワークか出社か選べるようにするためにも、ペーパーレス化からはじめている」と自社の取り組み話します。

ここで高柳氏が、コロナ禍の間、不動産賃貸仲介業の持続的な発展を目的とした活動を行う団体「REAN JAPAN」で管理会社と仲介会社についての議論を重ねてきたといい、その内容をスライドで見せました。以下はそれを表にしたものです。

仲介側、管理側の課題や不便に感じていることが業務工程ごとにまとめられています。そこには、コロナ関係なく以前から変わらずある課題や、オンライン化が進むなかで不便になってきたことが見受けられます。


当日のスライドより(クリックで拡大します)

管理会社と仲介会社、双方の本音

塩見氏は、「管理会社と仲介会社がコミュニケーションできていないこともあると思うので、聞きたい。たとえば、自動音声による物件確認はどうですか?」と物件の確認で使われる自動音声サービスに触れました。管理会社にとっては、自動音声による物件確認は、仲介会社からの確認電話が減るので工数削減につながります。

これについて仲介会社の3氏からは全員「問題なく、むしろありがたい」と24時間365日、時間を気にせず調べられる利便性を評価。ただ紫原氏は「物件確認の音声は主流になりつつあるからこそ、申し込みはFAXだけというのは違和感があります。移行期だからだとは思いますが、FAXしか申し込みは受け付けないというのは減らしていってほしい」と願います。

それよりも、ということで3氏からは「情報開示」の部分について管理側に対して言及がありました。

田村氏は「先ほど申し上げた通り、物件確認は音声でスムーズにできたとしても、いざ契約をする段階になると、情報が五月雨になっていってしまう問題があります。契約の時はこのような手法でお願いします。保険についてはこのようにお願いします……と管理会社さんごとに書類や作法が異なり、書類の洪水が発生する。やはり管理会社と私たち仲介会社、そしてエンドのお客様も、不動産の賃貸契約には何が必要で、どのようなプロセスなのかという情報開示が事前に行われると準備もできスムーズになるのではないでしょうか」と話し、塩見氏は「ここは変えていきたいところですね」と同意します。

紫原氏は「管理会社さんにお願いしたいのは、“リアルタイムな正確な情報提供”です。これが必要だと思います。仲介会社にとっても、これが一番ありがたい。お客様と話しをしている時に、私たちはタイムリー&スピーディーを求められます。情報が取りたい時に取れないのは事業として致命的な問題になってしまいます。これは現在のマイソク(不動産チラシにあるような物件概要や間取り図、地図などの情報)だけでは足りません」

鈴木氏も「物件に駐車場あり、と書かれていてもサイズが掲載されていない。大きな車に乗られているお客様は駐車できるかわからない。それで管理会社さんにサイズを聞くとわからないと言われてしまう。結果、私が採寸に行くわけです。同じように、マンションだとエレベーターなどのサイズが記載されていないため、毎回管理会社さんにお願いして私が採寸しにいく。あらかじめ採寸表があれば、こうした都度の作業が不要になります」

田村氏は「エンドのお客様が求める情報は年々変化していきます。最近はお客様もネットから様々な情報を仕入れています。彼らの知りたい情報を理解し、正確な情報をタイムリーに出してくれる管理会社は助かりますね」と鈴木氏を援護しました。

選ぶなら「管理会社が素晴らしいが駄目物件」か「管理会社は最悪だが優良物件」か?

ここで塩見氏が鈴木氏の採寸の話しから、「鈴木さんに聞きたいのですが、『管理会社が素晴らしいが駄目な物件』と『管理会社は最悪だが優良物件』だったらどっちを選びますか?」という質問が投げかけられ、鈴木氏が「どっちも選ばない」と即答して会場を沸かせました。

「これまでの経験上、どんなに物件がよくても、管理会社さんが横柄だったり雑だったりすると後々、必ずお客様と揉めてしまう。だからどんなにいい物件でも、管理会社さんが良くなければ次を探します。それが私にとっても、お客さんにとってもいい結果につながると考えています。やはり物件と管理会社さんは対なので両方良くなければ」

塩見氏は「私たち管理会社は“ここが管理をしているから借りたい”と思ってもらいたい」と話し、鈴木氏の回答に納得していたようです。さらに「どこならいい?」と塩見氏は鈴木氏に問いかけ、鈴木氏は「三井(三井不動産レジデンシャルサービスなど)の対応がすばらしい」と名指しで絶賛。同社が管理会社だと安心してお客様をご紹介できると話します。

紫原氏も「管理会社で選ぶは確かにありますね。よく決める管理会社、敬遠する管理会社、確かにあります。なぜそうなるかというと、やはり電話対応にしても姿勢が違う。良くないところは、仲介会社の先にお客様がいることを見ていないというか。そういう管理会社は敬遠してしまいますね」。この話を受けて、田村氏も「管理会社は部屋をお預かりしているから、そこにお客様を付けたいわけですよね。だからこそ、我々の後ろにそのお客様がいることを理解していただいている管理会社さんは、私たちにもしっかりとした対応をしてくれていたり、お客様との書類のやり取りやスケジューリングにかかる時間を短縮できるよう工夫してくださっているのでは」と続けます。

「仲介会社も良くない会社、社員もいて、管理会社にご迷惑をおかけすることも多々あるでしょう。だからこそ、コミュニケーションを重ねて切磋琢磨していかないといけない」とは鈴木氏。
塩見氏も「申し込みを同時に複数の物件にして、契約前日になってキャンセル…というような方もいると、その方、ひいてはその仲介会社に対して不信感を持たざるを得ないこともあります」とうなずく。

最後に塩見氏は「入居者であるお客様に不安を与えないのが、私たち管理会社のつとめだと思っています。そういう意味で、入居者様が相談したい内容を仲介会社に言うべきか、管理会社に言うべきか分からないというようなこともまだ多く、これは不安を与えてしまっていると思います。安心・安全・快適を追求していきたい」と話しました。

不動産業界における管理・仲介それぞれの視点でのディスカッションの中で見えてきたのは「欲しいときに欲しい情報が正確に得られる仕組み」と、管理会社と仲介会社の連携強化かもしれません。

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