SUUMOやHOME’sに頼らない集客とは?

今の時代に合った新しい非対面型のオンライン不動産仲介サービス「Town map」を提供しているINA&Associates株式会社。2020年2月にスタートした同社は「もっと分かりやすく。もっと使いやすく。もっとスムーズに。」というビジョンを掲げ、不動産事業のほかにもさまざまなサービスを展開しています。
今回は、同社のメンバーである福田氏にインタビューを行い、サービス内容やコロナ禍における変化などについて伺いました。
INA&Associates株式会社の会社概要及び事業内容
SUMAVE:御社の会社名と事業内容を教えていただけますか。
福田氏:INA&Associates株式会社の福田と申します。弊社の事業は、IT×不動産を軸にした「不動産事業」「テクノロジー事業」の2つがメインになります。
不動産事業は、売買仲介、賃貸仲介、不動産の管理をやっています。テクノロジー事業は、オウンドメディアの運用、Webサイトの構築、それぞれの保守と社内システムRPAでの業務支援を最近始めました。
弊社のコーポレートメッセージとして「もっと分かりやすく。もっと使いやすく。もっとスムーズに。」というものがあります。不動産でいうと、いまだにファックスをメインで使っている、サイトで物件を問い合わせしてもすでに申し込みが入ってしまっているなど、このネットの時代に分かりにくかったり、使いにくかったりということが多々あり、それを解決していきたいと思っています。
不動産事業におけるコロナ禍、コロナ前での業績の変化について
SUMAVE:御社の不動産仲介事業でコロナ禍、コロナ前の反響や来店数の違いなどを教えてもらえますか。
福田氏:弊社はオンライン仲介をメインにしていて、賃貸契約もIT重説(賃貸契約における重要事項説明を対面ではなく、オンラインで行うこと)を行っています。
東京都の「新生活様式」に対応しているということと、コロナ禍が追い風になりスタートしてから100名ほど仲介をさせていただいています。一部管理会社さんで契約しないといけないという例外はあるんですけれども、それ以外は基本的に郵送、IT重説で非対面完結をしています。内見も「Zoom」なり「Google Meet」なりを使い、オンラインで内見したい要望があればそちらで対応して、内見も契約もオンラインでという方には一回も会うことなく、郵送だけのやり取りで完結しているのが今の弊社の状況です。
SUMAVE:コロナ禍が追い風になっているということは、反響も増えたのでしょうか。
福田氏:反響も増えていますね。スタートしたところから比べて右肩上がりです。
SUMAVE:オンラインやテクノロジーに力を入れ始めたのはいつ頃からですか?
福田氏:弊社でTown mapというサービスを始めたのが昨年の10月、11月からなので、その辺りからですね。最初は単純に情報発信みたいなところからオンラインでお部屋探しが出来る機能を追加して、LINEでも連携してチャットなどができるようにという形でどんどん広げていっています。1〜3ヶ月くらいのペースで新しい機能を追加して改善を加え、アジャイル型でやっています。
【画像出典】https://town-maps.jp/online-heya/
SUMAVE:御社の業務フローを教えていただけますか。
福田氏:まずは、Town mapから自分の名前、連絡先や希望条件を入力してもらいます。希望条件を入力していただくと、その条件に基づく物件を自動で提案してくれます。頻度や条件もマイページから変更可能です。提案された物件を見ることや、地図を見て自分で物件を探すこともできるので、そのなかからお気に入りの物件を見つけるというのが第1ステップです。
そのあとに内見をしたい場合はチャットでご連絡をいただくか、内見の予約がWeb上でできるので、それを使って内見の予定日を登録していただきます。現地で実際にお部屋を見たいお客様は現地集合、オンライン上で内見を済ませたいお客様はオンラインで内見をしていただき、申し込みをしたいお部屋が決まったら申込書を送付、記入し、返信していただく。それも全部Town map上でできます。
そのあとに管理会社の審査をしてもらい、通過後に初期費用を払って契約をしてという流れになります。最後の書類のやり取りは基本的に郵送で契約、IT重説もZoomやGoogle Meetを使って行います。
INA&Associates株式会社の運営方法や強み
SUMAVE:Town mapというサイトは、御社のオウンドメディアという形ですか?
福田氏:そうですね。お部屋探しもできつつ、情報も発信するという形です。
SUMAVE:御社の場合は、外部の「SUUMOさん」「HOME’Sさん」に頼らずオウンドメディアで集客ができているということですか。
福田氏:SUUMOさんとかアットホームさんと提携しているということはなく、申し込みがすでに入っているのにサイト上に情報が残ってしまっている物件をなるべく排除し、管理会社と連携をしてなるべくリアルタイムでの情報の有無を更新しています。
SUMAVE:巨大プラットフォームに頼らないという運営方法は、不動産会社のなかではレアなケースですか?
福田氏:レアといえばレアですけれども、プラットフォームを使おうとすると「アクセスをしてもらうためにどうするか?」に注力してしまい、物件情報のリアルタイム更新がおろそかになり、悪循環に陥ってしまうのではないかと懸念していました。自分たちでサイトを持つことでアクセスを取るためだけに何かする必要がなく、自然流入だけで勝負していきたいと考えています。
SUMAVE:SEO対策やサイトへ流入してもらうための施策は社内で行っていますか?
福田氏:テクノロジー部署と連携しながら、SEO対策やPR活動などを常にやっています。
SUMAVE:最初から巨大プラットフォームに頼らず運営をしようと考えていたのか、最初は使っていて、自分たちのビジョンに合わなかったためオウンドメディアを作ったのかどちらですか?
福田氏:最初から頼るつもりはなかったです。賃貸管理をやっていきたいという思いがあったので、賃貸管理の個数が増えていったときに自分たちのメディアを持っていることで、正しく自社の情報を発信できるというところに重要性を感じていました。
SUMAVE:巨大プラットフォームを使うことでさまざまなリスクを懸念されたということですね。素晴らしいと思います。
IT×不動産という試みに対して顧客からの不満は感じるか?
SUMAVE:不動産においてテクノロジーを使うことでお客さんから不満などはあったりしますか? 例えば、わかりにくいとか、オンライン内見が見にくいとか。
福田氏:今のところ大きな不満はないですね。サイト内の細かい不満などはありますが、根本のIT重説などの不満は全くなく、むしろこれでやっていけるという確信のほうが大きいです。
INA&Associates株式会社がテクノロジーの導入に成功している理由、他社はなぜ成功しないのか?
SUMAVE:不動産業界全体で、テクノロジーの導入が進んでいないなか、INA&Associates株式会社が導入できている理由や、なぜ他の会社が導入できていないかを教えてもらえますか。
福田氏:導入できている理由は、それしかやらない(IT×不動産)と最初から決めているのが1番大きいと思います。
他社さんが導入できない理由は、全体的にスタッフの年齢層が高いため、ITなどの知らないことに対して「まだいいかな」という拒否反応に近いものがあるのではないかと思っています。
また、多くの企業は、集客をするために1階の路面店じゃないといけないこだわりのようなものを感じますが、弊社はそこにこだわりは全くありません。
SUMAVE:東京と地方の不動産業界のなかでIT格差はありますか?
福田氏:地方の方との差は感じます。地場の高齢の業者さんだと、申し込みをFAXで送らなくてはいけない、鍵を直接取りに行かなくてはいけないというところがあり、地域差を感じます。弊社は1室1,000円で管理しようとトライアンドエラーを繰り返しており、地方の高齢で後継者が不足しているような業者さんのアウトソース先やM&Aで合併したりということを目指しています。
都心、地方におけるユーザーのITリテラシーの格差はあるか?
SUMAVE:地方のお客さんがZoomやGoogle Meetなどのオンラインツールを使うことに抵抗はないですか?
福田氏:ツールを使うこと自体に拒否反応はありませんが、初めてオンライン上で対面する際に、顔を映したくないといったことはありますね。チャットやLINEなどのツールは、メールで連絡するよりも距離が近いため、重宝しています。
不動産業界とITに関する今後の展望について
SUMAVE:5年後、10年後の不動産テック、賃貸仲介はどうなっていくと考えていますか?
福田氏:賃貸仲介に関しては、今後オンライン決済ができるようにしたいと考えています。従来の入金に関する段取りやリマインド、管理会社への連絡といった流れがすごい無駄に感じていて、オンライン決済ができるようになれば、パッと終わるのにと思います。現状のオンライン決済ツールを見ていると、オンライン決済を不動産で行うというのは実現できるのではないかと思っており、今後不動産関連の企業でもオンライン決済が当たり前になっていくと感じています。弊社でも導入できるように開発を進めています。
SUMAVE:コロナ禍で店舗の意義が変わっていて、直接行かなくてもいいという考えが広まってきていると思うのですが、現状のリアル店舗が今後どうなっていくか、どうなるべきかを教えてください。
福田氏:リアル店舗を完全に0にするためには、まず法改正の必要があると思います。リアル店舗でもできることがたくさんあって、自社の管理物件をZoomなどで紹介、やり取りすることはリアル店舗でもやっていったほうがいいと思います。法改正がおこなわれ、法律などの障害がなくなった際は、リアル店舗の必要性は感じていません。対面で直接やり取りするよりも、ITツールを使ったほうがトータルでかかる時間は短いのではと感じています。リアル店舗だと、条件を聞いてそれをメモして物件を探すのですが、うちの場合はお客さんがすでに物件を探しているので、かかっている時間が違います。
SUMAVE:リアル店舗とオンラインでは接客時間にどれくらいの差がありますか?
福田氏:オンライン内見だけだったら15〜20分くらいで終わります。
SUMAVE:不動産仲介のテクノロジー化が進んでいくなかで、テクノロジーではなく、人間が対応しなくてはいけない部分はありますか?
福田氏:人間に聞かないと不安に感じる方に対しては、人間が対応する必要はあると思いますが、そういう方は、今後時代が変わるにつれて減っていくと思います。
SUMAVE:不動産業界が、ユニクロのような完全に接客をしなくていい業務フローにならない理由は、お客さんによって好みが違う点や、日当たりなどの細かい部分を人間と一緒に確認したいからだと聞いたことがあるのですが、どうでしょうか?
福田氏:オンライン内見だけで完結できるかどうかは人それぞれなので、実際に部屋を見たい方に関しては一定数人間での対応が必要かと思います。
SUMAVE:不動産業界に関わらず、テクノロジーが発展していったときに1番大変なのは中間に挟まれることだと思っていて、テクノロジー化して効率を重視するか、徹底的に対面接客にこだわるか、どちらかに振り切ったほうがいいと思うのですが。
福田氏:確かにそうですね。ビジネス的にいうと中途半端にするのではなく、どちらか2つに分かれるのがいいと思います。今はZoomなどのオンラインツールを使ったオンライン内見やIT重説も、パソコンではなくスマホで簡単にできるので不動産業界のテクノロジー発展に対する追い風になっていますね。
SUMAVE:今後、ITテクノロジーが発展していき人材などのコストが削減された分、ユーザーに還元していくという流れですね。いろいろ聞かせていただき、ありがとうございました。
インタビュアー : Rean Japan 夏目 力
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