「DXは経営の話である」DX銘柄2020を解説した経済産業省・宮本祐輔氏をクローズアップ

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「DXは経営の話である」DX銘柄2020を解説した経済産業省・宮本祐輔氏をクローズアップ

はじめに

2020年1020日にPropTechJapanがオンラインセミナーを開催しました。PropTech Japanは、不動産や建設の業界でスタートアップの支援をしたり、業界のデジタルトランスフォーメーションをサポートしたりしているコミュニティです。この日は、経産省が改設した“DX銘柄2020”についてのトークセッションがありました。その内容から本記事で紹介するのは、経済産業省・商務情報政策局・情報技術利用促進課の宮本祐輔氏(画像下)のプレゼンです。

経産省は、2019年までの5年間にわたり“攻めのIT経営銘柄”としていた選定を今年から“DX銘柄”に改称しました。この日は、宮本氏より、DX銘柄がなんであるかの概要説明がありました。

画像出典元:https://dx2020re.peatix.com/

アフターコロナの不動産業界におけるDXのエッセンスを紹介する、今回のSUMAVEDX通信では、経産省が考えるDXを取り上げます。ご覧ください。

DX銘柄とは

宮本:今日は、私からDX銘柄等の話をさせていただきます。その前身となる、“攻めのIT経営銘柄”の話を簡単に。これは、2015年から2019年まで実施していました。企業のIT活用、製品サービスの強化、ビジネスモデル変革で新たな価値を創出したり、それを通じた競争力の強化に戦略的に取り組む経営をしていたりする企業を選定するものです。その名称を2020年から、DX銘柄に改めております。“攻めのIT経営銘柄”に以下3点を加えたものがDX銘柄です。

宮本:1つ目が、ビジネスの変革について。2つ目が、戦略的取組です。3つ目が、経営者のリーダーシップについて。この3点を重視するのがDX銘柄になります。1つ目のビジネスの変革では、機会とリスクをふまえたビジネスモデルをどう考えていくかが問われます。2つ目の戦略的取組にあるのは、4つのABCD要素です。その取組が、散発的なものやPoCで終わるものではなく、経営戦略に位置付けられているかどうか。これをやるための組織・人材・企業文化を変革する取り組みがあるか。計画的にレガシーを刷新して、攻めの投資へシフトできているか。それらに適切なKPIを設置し、管理できているか。最後の3つ目は、DXを経営の問題ととらえ、経営者みずからが全体戦略をステークホルダーと議論する準備があるかどうかが問われます。

宮本:スライドの左側が、攻めのIT経営銘柄2019の評価フレームで、右がDX銘柄2020になります。注目していただきたいのは、DX銘柄で「デジタル」や「情報」のキーワードが入っている評価項目です。それは、ギリシャ文字の“2”の、「デジタル技術の活用・情報システム」だけです。では、DXにおいて、デジタルやITが関係するのは、デジタル技術の活用・情報システムの話だけなのかというと違います。そうではなく、全体にかかっている話なんです。私たちは、DXというのは単なるIT化やデジタル化の話ではなく、経営の話だと考えています。そこを強くいいたいと思っています。

宮本:実際の評価図式です。縦軸は、上にいくと外部性、下にいくと内部性をみています。横軸は、左にいくほどに既存事業性が増し、そこから右にいくにつれ、中核事業をどのように進化させていくのか、深くしていくのかをみるものです。一番右側が、自社、業界にとって、新しい指標をどのように作っていくのかという話になります。デジタルトランスフォーメーションのイメージからくる“変革”は、一般に縦軸の下のセグメントについてがいわれます。社内の生産性向上を実現するものですね。たとえば、「RPAを導入してコストがいくら下がりました」とかって話があります。これは“DXの話の一部”ではありますが、それは内部(社内)だけの話で、縦軸の上のセグメントの話がありません。つまり、それが顧客、社会、業界をどのように変革させたのかという話です。横軸を起点に上のセグメント要素です。DX銘柄の評価では、そちらに重きを置いています。顧客との関係強化、新セグメントへの展開、商品の質の改善も重要です。既存の事業ドメインを変えずに収益の成長を目指す取り組みがなされているか。これが連続的なイノベーションから非連続なイノベーションへ。右上のセグメントです。これまでになかった価値を創出したり、これまでに存在しなかった顧客市場を創造することで新たなビジネスモデルを実現したりしたか。新たな事業分野へ進出する取り組みも重要です。それらを全般的に評価しているんですが、なかでも一番、評価するところは右上の新規ビジネスの創出についてです。デジタル技術がなければ実現しなかったことをデジタル技術にとらわれず、経営的目線からビジネスモデルを構築し、きちんと実現できるような体制(組織)を構築できているか。単純な仕組みの導入という話ではなく、経営目線から考えてどうか、という話です。ここから、もう少し経産省がやっているDX政策の体系についてお話します。

宮本:体系としては、ピラミッド図になっています。ピラミッドは4段階あります。DX注目企業というものがありまして、ピラミッドの上2つが該当します。DXに取り組んでいる企業、DXを牽引していくような企業を選定するものです。最初は、ピラミッドの一番下、“DX-Ready以前”というところからはじまります。次がDX-Readyです。それから注目企業になっていきます。下から2つ目の“DX-Ready企業”は、より、上に向かうためにDXの準備を整えている企業という位置づけです。ここについては、国が、「DXをやるための準備ができている企業」を認定するということを考えています。一番下に該当する“DX-Ready以前”には、DX推進資料というものがあります。これは、各社が自己診断できるようなツールです。

宮本:DX推進指標とはDX推進状況について、各企業が簡易な自己診断を行うことを可能とするものです。

画像出典元:https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003.html

宮本:文字が小さくてすみません。特徴は2つ。スライドの左側は経営の話で、右側がITの話です。さきほど、DX銘柄のときも話しましたが、DXとは単なる“IT化”の話ではありません。経営の話です。その重要性をスライドの左側で表現しています。経営として何をやりたいのかの指標です。その経営の考えをITシステムでどう実現していくか。それがスライドの右側の指標になります。その両輪をきちんと回していく必要があるのです。しっかりと両輪をまわすことができているかをセルフチェックできるものとして、上のスライドを作成しました。

宮本:経産省は、DX推進の指標を健康診断にたとえています。DX推進指標を用いた自己診断は、健康診断でいうところの、「問診票」「血液検査」のような位置づけです。スライドでいうと、それが左側の2つです。自社の課題をどうしていくかという具体的な話は、健康診断でいうところの、詳細診断に置きかえられます。戦略コンサルやITベンダーによるサポートは、「人間ドッグ」「精密検査」という位置づけです。そこから、具体的なITシステムの構築・改修・刷新にとりかかる段階を「専門医による治療」に置きかえて説明しています。次は、DX認定、法認定についてです。

宮本:法認定は、申請に基づき、法令基準を満たす事業者を認定するものです。基本的には基準を満たしたら認定されるものです。冒頭に話したDX銘柄が、「ほかの企業と比べながら優れた企業を選定するもの」であるのに対して、DX認定は、ほかの企業と比較をしません。努力する企業は認定される、という考えです。ただし、努力の方向性というものがありまして、次のスライドをご覧ください。

宮本:申請などの本格稼働は11月を予定しています。現在、わかりやすくするガイダンスを作成しておりますので、すいませんが詳細は、ガイダンスが出たときに再度ご覧いただけると幸いです。現状(2020106日時点)を簡単にご説明すると、経営や情報処理技術活用の方向性について、それに対する戦略、KPIや情報発信についての項目があります。

宮本:DX銘柄の説明のときにも申し上げましたが、DX認定においても、重要なのは、「どのような技術を使いますか」ではなく、「経営をどう考えていますか」がキモです。一部門ということではなく、デジタル社会を前提としながら情報技術の利活用を経営ビジョンのなかでどう考えているか。実現するための組織、人事制度をどう組み替えるか。採用はどうするのか。DXとは、そういうものをすべて含めた経営の話です。その話の末端で、難しいITシステムを入れるという判断に至ることは考えられますが、それは、「結果としてそうなる場合もある」という話です。DXが経営の話であるとなれば、情報処理技術の活用を示す方向性は、取締役会の承認が必要になるはずです。それをビジョンとして世に公表しているか。公表するなら、経営のコミットが求められます。単なる一部門の取り組みとして“済ます”ことはできなくなり、全社をあげて取り組むことが必要です。詳細については、11月上旬ごろには公表されることになると思いますので、それらを見ながら、興味があるかたは申請を検討いただければ幸いです。

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