【レポート】テクノロジで変革する不動産業界の最前線~Real Estate Tech 2018~ハイライト版    

【レポート】テクノロジで変革する不動産業界の最前線~Real Estate Tech 2018~ハイライト版

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【レポート】テクノロジで変革する不動産業界の最前線~Real Estate Tech 2018~ハイライト版

2018年11月7日に、”業界のオンライン化”をテーマにした、不動産テックイベント『テクノロジで変革する不動産業界の最前線~Real Estate Tech 2018~』が開催されました。会場は、東京都港区にある、イベントホール『ベルサール御成門駅前』です。イベントは、ハウスコム株式会社が主催しました。

ハウスコムの代表取締役社長・田村穂氏(画像上)は、イベントの開会にあたり、海外視察で目の当たりにした中国のテクノロジー事情を紹介。

自動運転の技術開発をすすめる百度(バイドゥ)、アリババグループがローカルサービスとして展開している生鮮食品スーパー、盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)での体験を次のように語りました。

中国でのリアルとバーチャル、あるいは、リアルとネットの融合を視察してきました。この体験で考えたことは、『中国の最新事情を私たちの環境に置き換えると、どんなキーワードがあるだろう』です。私は、都市の定義が変わるのかもしれない、というキーワードに思い至りました(田村氏)

不動産業界は、”住空間=自宅“の定義が変わってきています。テレワークによって自宅は職場になりえ、ネットを活用することで、自宅を病院のように機能させることもできる時代です。多様な時代において重要なことは、何が変わり、何が変わらないのかの見極めではないでしょうか(田村氏)

このほか、当日は、登壇企業によるピッチや、トークセッションなどが用意されていました。そのなかから、今回の記事でクローズアップするのは、登壇企業全社が参加したトークセッションです。題して『未来の住環境と不動産業の在り方』です。

トークセッション/未来の住環境と不動産業の在り方

登壇したのは、以下のメンバーです。
※以下、敬称省略。

  • 田村穂/ハウスコム株式会社・代表取締役社長執行役員
  • 佐瀬篤史/東急住宅リース株式会社・執行役員 事業戦略本部長 兼 戦略企画部長
  • 多田英起/ナーブ株式会社・代表取締役社長
  • 野田伸一郎/株式会社Tryell(トライエル)・代表取締役社長
  • 西野量/株式会社セイルボート・代表取締役(※出張先のニューヨークからライブ中継による参加)
  • 小野誠人(IMAos開発責任者)/ソフトバンク コマース&サービス株式会社※モデレーター

トークセッションでは、ソフトバンクの小野氏がモデレーターを務めました。内容をハイライトでご紹介します。

オンライン化が進むと仲介店舗はなくなるのか


小野:業務のテクノロジー化にともない、これまで人間がやっていた仕事をITが肩代わりするのではないかという話はいろいろなところでされています。同じ意味合いで、オンライン化が進むと仲介店舗はなくなるのかどうか。みなさんの意見をお聞きしたいと思います。まずは、田村さんからお願いできますか。


田村:リアル店舗を持つ私たちのような企業は、“店舗をツール(道具)としてみるか、インフラ(生活基盤に欠かせない機能や施設)としてみるか”なのだと感じています。道具としてみる場合、店舗以外の何かに、店舗が代替えされる危険性は高いです。携帯電話がスマートフォンに移り変わったように、時流の影響を受けて代替えするものになっていくだろうなと感じます。生活基盤に欠かせない機能や施設としてみる場合、健全な社会・地域を築くうえで、店舗は必要な役割を担い続けるでしょう。私たちハウスコムが目指しているのも、インフラとしての店舗という立ち位置です。

小野:ありがとうございます。“管理会社目線”で、佐瀬さんのご意見をお聞かせください。

佐瀬:落合陽一さんの著書から引用させていただきたい話があるんですが、インドのカースト制度の話です。生まれながらに決まる階級によって、自分のできる仕事も決まってしまう彼らのなかに、“トイレのドアを開け閉めする仕事”に就いている人がいるそうです。その人に、「トイレが自動ドアになったらどうするんですか? 」と尋ねるとその人は、「自動ドアを設置する会社に勤める」と答えたんだとか。トイレのティッシュを配る仕事に就いている人に、「温水洗浄機能付きの便座が普及して、テュッシュが不要になったら? 」と尋ねるとその人は、「その便座をメンテナンスする会社に勤める」と。機械の外側を人間がやる(機械を操作する、整備する仕事をする)わけです。管理会社の場合も、いまの業務をいまと同じやりかたで続けられない危険性は、あると思っています。でも、人間は臨機応変に対応していくのであろう、ということです。つまり、店舗としての機能や役割が変わるだけで、なくならないのではないかなと。

小野:ポータルサイトご出身の西野さんや野田さんは、どうお考えですか。まずは、ニューヨークに出張中の西野さんからお願いします。

西野:いまの機能のままでっていうのは、残念ながら、減る傾向にあるように感じています。しかし、それは、仲介会社の重要な役割をテクノロジーで完全に補うことができた場合、という注釈つきです。このテーマを語るとき、“管理会社にアジャストする仲介会社の機能”の重要さが、つねに見過ごされていると思っています。管理会社には、その数だけ、細かなルールがありますよね。たとえば、「内覧時は名刺を入れる」「申込を“仮”で入れられるのは24時間以内」などです。管理会社よってバラバラなルールを仲介会社は調整し、対応します。これが、仲介会社のアジャストする機能です。かりに、バラバラなルールが電子契約などで統一されると、“アジャストする”という仲介会社の機能の1つが、少しだけ弱まってくるのかなという危機感は持っています。

野田:オンライン内見(R)を提供している私たちとしても、仲介店舗はなくならないと思っています。業務のオンライン化・電子化は、「不動産会社さんの作業工数を削減したい」「お客様に満足度の高いお部屋探しを提供したい」が目的です。つまり、店舗をなくすことが目的ではないのです。電子化=店舗不要という話は、少なくとも私たちが目指している取り組みでもありませんし、直接、結び付かないのかなと感じています。

小野:このテーマの最後は、バーチャル店舗を展開するナーブの多田さん、ご意見を聞かせてください。

多田:私は、最適化されていくのだと考えています。店舗が案内所のような形に、ありかたを変えるのかもしれないし、私たちが推奨している無人店舗なのかもしれない。もしくは、5名の営業スタッフが3名に、3名が2名にというように、少しずつの変化なのかもしれません。

ありかたや営業スタッフの人数に正解はないですが、私たちはみなさんと一緒に、答えを探していきたいです。ハウスコムさんや東急住宅リースさんには、新しい世界へ向けて、業界をひっぱっていってほしいという気持ちもあります。このテーマで話をするとき、次のようなセリフを投げかけられることが多くあります。「ナーブは何をやりたいんですか? 仲介会社をなくしたいのですか」と(笑)。でも、まったくそうではないんです。誤解のないよう、付け加えておきたいのは、私たちが生み出したい未来は、“不動産会社さんが利益を上げて、これまで以上に効率よく業務を回せる世界”です。その仕組み作りに私たちは貢献したいのです。

不動産テックが普及するために必要なこと


小野:デジタル化を推進している不動産会社さんの特徴をお聞きしてみたいと思います。テクノロジーを不動産会社へ提供している立場からして、野田さんは何か感じるところがありますか。

野田:店舗さんでいうと、次の3つくらいが共通しています。

  • まずは使ってみよう、と動けるか
  • オペレーションに組み込めるか
  • 検証できるか

”業務のオンライン化”に取り組んでいる不動産会社さんは、もれなく、この3つが徹底されている印象です。私の実感値ですが、「自社のIT化をすすめているよ」と話してくださる不動産会社さんのなかでも、3つのポイントを徹底しているところは、それほど多くないと感じています。

小野:なるほど。電子契約の普及に努めている経験から、私もコメントさせていただきたいと思っています。私の感じる、デジタル化を推進している不動産会社さんの特徴の1つのが、“会議室に液晶モニターとプロジェクターがある”です。

これは、「この企業様に電子契約を使ってもらえそうかどうか」という判断材料の1つでもあります。会議室に液晶モニターなどが見当たらない企業様だと、経験上、紙に頼った業務環境である場合が多いです。結果、電子契約の導入ハードルは非常に高くなります。ちなみに、ソフトバンクグループには、孫正義が、“日本一のペーパーレス企業を目指す”と話しはじめた時期がありました。以来、複合機は撤去、全会議室に設置されたのがディスプレイでした。会議は、プロジェクターで投影するスタイルです。

私の外部向けプレゼン資料は100枚以上になることがあり、これを社内で印刷したら、月末に総務から問い詰められます。「なぜ、こんなに大量の紙を使ったのか」と。先月末も、500枚くらいを印刷したのですが、反省文を書きました(笑)。社内のIT化を考えていて、何から手を付ければよいものかと悩む場合は、まず、液晶モニターやプロジェクターを設置することからはじめるのがいいかもしれません。

物件選び、暮らしかた、賃貸。価値観はどう変わったか


小野:ITの普及によって感じる変化について、みなさんのご意見をお聞かせください。業務をするなかで、物件選び、暮らしかた、賃貸の価値観に、変化を感じますか。

田村:感じますね。変わったなと思うのは、“ライフスタイル”ではなく、“ライフサイクル”というキーワードを口にするお客様が増えたことです。変化のタイミングは、お客様によって大きく違うと感じています。

佐瀬:私も、変化を感じるキーワードの1つに多様性があると思っています。これまで、契約が多いトップシーズンは、期間が特定されていて、売上は平常時の3倍くらいでした。これが、現在は平準化に向かっているような印象を持っています。完全に年間を通して均等というわけではないですが、”ライフサイクルの多様化がもたらす変化の1つ”ではないかなと考えています。

西野:以前のように、「部屋を探しています」「いい物件ありますか」ではなく、お客様は、「Aという物件はまだありますか」と問い合わせてくる時代です。特定の物件を事前に調べてくるお客様は、全体の75%を占めるというデータもあります。これが、10年前は40%くらいでした。徹底的に調べ、ピンポイントで問い合わせてくるという物件の探しかたは、明らかに変わりました。

野田:私は、“エンドユーザーからの相談内容が変わりつつあるな”という実感があります。知り合いから、「不動産会社さんを紹介してほしい」という相談を頻繁に受けます。毎月5から10件くらいの数です。「どういう不動産会社を紹介してほしいか」を聞くと、7年くらい前までは次のようなポイントでした。

  • 物件の数を持っている
  • 特定の地域・エリアに強い
  • とにかく安くできる

しかし、ここ数年は、「信用できる不動産会社さんってどこですか」というように聞かれます。「野田さんの知り合いの不動産会社を紹介してください」と。


多田:私は、賃貸の価値観が変わったと感じるポイントの1つに、“イケてる物件の増加”があります。以前は、大勢から65点を取れるような物件が人気でした。ところが、最近は、“特定のユーザーには100点、それ以外のユーザーには0点”というような個性の際立った物件が増えていますよね。これは、ユーザーの心理や価値観が変わってきていることの表れなのではないでしょうか。仲介会社さん側の目線でいうと、ここ1年くらいは、反響来店にお困りの店舗さんが増えている印象です。反響はとれるけど、来店がとりにくいといいますか。従来の“反響≒来店”式が成り立たなくなっています。この動向が、2019年、2020年にどう進化していくのか。今後も業界に寄り添って見守りたいですし、私たちにできることがあれば、最大限の協力をしたいですね。

注目のテクノロジー


小野:最後に、みなさんが注目しているテクノロジーについて、教えてください。

西野:私はいま、ニューヨークの不動産テックイベントに来ているんですが、ここにいて感じるトレンドの1つは、ブロックチェーンです。アメリカでは、まだ、権利移転、トランスファーのところが合法にはなっていないようなんですが、そのまえにプロダクトが出ています。先行者利益を取ろうとしている企業の動向かもしれません。アメリカっぽくて面白いなという印象を持ちました。

佐瀬:私からは、簡単に3つをご紹介させてください。1つ目、注目している不動産テック企業の話をできればと思うのですが、工事関係のリテック(ReTech)企業です。クラウドソーシングを使い、現場の作業員を采配できるサービスがあり、注目しています。2つ目、ブルーオーシャンなのではないかと考え、注目しているのは、Alやデータ解析のテクノロジーです。これを活用することで、“物件が現在どういう状態にあるのか”という情報にアクセスできるようになるのではと期待しています。3つ目は、ナーブさんに代表されるような、バリューチェーンをまたぐエコシステムの躍進です。室内のVR画像を撮影しようとなったとき、すぐに思いつく撮影者は、管理や仲介会社の営業スタッフです。それをですね、入居者が退去するときの修繕・工事作業をする人に、やってもらいます。つまり、退去修繕の作業と、募集のための室内撮影作業をつなげる、というエコシステムです。個人的には、こうしたテクノロジーを生かしたアイデアが、ナーブさんの躍進に大きな役割を果たしているように感じています。

多田:佐瀬さん、ありがとうございます。私が、ちょっと面白いな、と思って注目しているのはWeWorkです。リアルなオフィスを“テクノロジー”という定義で語る文脈に、面白さを感じています。

1坪の土地でも、WeWorkの入ったビルのフロアのほうが、そうではないビルのフロアよりも、賃料が高いわけです。”違い”はテクノロジーによってもたらされ、”違い”が入居者の満足度を高めています。これは、”テクノロジーをうまく生かすことで賃料を従来よりも高く設定できる”という事例の1つです。当社もWeWorkにオフィスを構えていますが、非常に満足です。今後も、賃料を高く設定するための要因としてテクノロジーが使われるケースは、増えるのだろうと予想しています。

野田:オンライン化、テック化したい領域として私が注目しているのは、“紹介”です。人と人のつながりは、ツールがオンライン化されても、なくなることはありません。たとえば、“誰かの部屋探しを自分の部屋探しに生かせたらな”と思います。これは、広告を意味する”アド”と、テクノロジーをかけ合わせた造語である、”アドテク(ADTech)”でもあります。

私は、ユーチューバーやブイチューバー(Vtuber)を使った、インフルエンサーマーケティングを不動産領域で活用するアイデアなどに、注目しています。

田村:私が注目しているキーワードは、デジタルツインです。仮想のものを使いなから、ちょっとした未来を作り、リアルとバーチャルを融合するテクノロジーですね。デジタルツインを活用すれば、バーチャルでの想定結果から、リアルの変化やリスクを予測することができます。こうしたテクノロジーをお客様のお部屋探しに生かすことができれば、新しい価値を提供できるのではないかと感じます。

まとめ

ニューヨークと東京が中継で結ばれた不動産テックイベントを初めて取材しました。こうしたイベント形式は、今後の不動産テックイベントで、増えていくのかもしれません。たとえば、登壇者の全員が別の場所からイベントに登壇したり、来場者が自分のパソコン画面に映る映像を見ることで参加したりする、不動産テックイベントです。

「そういう不動産テックイベントをやっています」という読者がいるなら、ぜひ、SUMAVEまでご連絡ください。

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