【国内初!】仮想通貨での不動産取引がスタート。先駆者であるイタンジが見据える不動産取引の未来の形とは

- 「ヘヤジンコイン」はビットコインで不動産売買ができるサービス
- 「ヘヤジンコイン」でメリットを受けるのは海外と取引をする人たち
- 不動産取引と仮想通貨は相性が良い
- 今後の技術革新によって不動産そのものの金融商品化が進む可能性がある
はじめに
「日本で仮想通貨が根付くわけがない」。財界界隈で、数年前までそう言われていた仮想通貨が、いま飛ぶ鳥を落とす勢いで利用者数を増やし、風向きが変わりはじめました。
仮想通貨取引所のハッキング事件しかり、各所の暴騰・暴落に関する話題しかり、リスキーな話がなにかと飛び交う仮想通貨。不動産テック企業のイタンジ株式会社の伊藤嘉盛(イトウ ヨシモリ)代表は”仮想通貨と不動産は親和性が高い”という新しい可能性を見出しました。
仮想通貨を使って不動産取引ができる「HEYAZINE COIN(ヘヤジンコイン)」は不動産業界を変える第一歩になりそうです。「ヘヤジンコイン」とは? 仮想通貨をめぐる不動産業界の未来はどうなるのか?そうした疑問を直接、代表に聞きました。
この記事で使う用語について
ビットコイン:2009年に誕生したインターネット上で使える仮想通貨の一つです。 特徴は、中央銀行の監督下にない代わりに、ブロックチェーン技術という分散型台帳によって成り立っていることです。
ブロックチェーン技術(分散型台帳技術):ビットコインを実現するために生み出された技術。世界中に点在するパソコンに分散してデータを保管することで、改ざんを防止しています。
「ヘヤジンコイン」は仮想通貨で不動産売買ができる日本初のサービス
「HEYAZINE COIN(ヘヤジンコイン)」:https://coin.heyazine.com/
Q:2018年1月10日にリリースされた新サービス「ヘヤジンコイン」の詳細を教えて下さい。
伊藤:ビットコインで不動産売買ができるサービスです。既存の不動産情報サイトの「SUUMO(スーモ)」や「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」では、不動産の売買価格が円で表示されていますが、「ヘヤジンコイン」ではそれがビットコインで表示されています。違いは本当にそれだけです。
Q:仮想通貨を使った不動産売買サイトは国内で初めてですよね。
伊藤:「誰もやっていないことをまずはやってみよう」ということがベンチャーの役割であり、存在意義であると思っています。また、仮想通貨で資産形成をしている人たちは日本円よりも仮想通貨を欲しがる傾向があります。
しかし、仮想通貨を持っていても、今は使える場所が少ない。そこで、「使う場所を提供してみよう」という発想で始めたのが「ヘヤジンコイン」です。「仮想通貨が欲しい」「仮想通貨を使いたい」という人たちに向けてリリースしました。
国を超えて不動産売買の取引をする人たちにとって、メリットが大きい
Q:現金と性質の異なるビットコインが不動産の決済手段に加わったことで、利用者にはどんなメリットが生まれてくるのでしょうか。
伊藤:海外送金が楽にできるようになったことですね。海外送金はすごく大変なんです。「どんだけ書類書かせるんだ」って嘆きたくなるくらいの必要書類があり、さらに窓口まで赴かなければいけない。ビットコインであれば、その手間を省くことができます。なので、海外の人と不動産売買の取引をする人たちにとってはメリットが大きいと思います。
Q:逆にデメリットはありますか。
伊藤:通貨そのものの変動リスクです。価格の値動きが大きいので、不動産が売れた瞬間にビットコインが暴落した場合、受け取る金額が小さくなります。でもこれは逆に、”不動産が安く買える”といったメリットにつながると思っています。
実は、私自身も半年前に仮想通貨の取引を始めて、いつか上がるのを楽しみに温存しています(笑)
Q:仮想通貨取引所を襲ったハッキング事件も起こっており、仮想通貨そのものの安全性が疑問視されていることについてはいかがでしょうか。
伊藤:「ヘヤジンコイン」がハッキングの対象になることはあまりないでしょう。ビットコインのやり取りは、取引所経由で行っており、その安全性は取引所のセキュリティに準ずることになります。いま利用している取引所は大手のビットフライヤー*なので、信頼しています。
*ビットフライヤーは、 ビットコインの取引量が日本一(2017年 2月仮想通貨取引所ビジネスの市場規模調査)とされている世界でも有数の仮想通貨取引所。みずほファイナンシャルグループや第一生命が株主として名を連ねている。
Q:「ヘヤジンコイン」をリリースしてまだ2ヶ月弱と聞いています。どういった反響がありましたか。
伊藤:最近だと、ここ2週間で100件ほどの問合わせを頂いている状況です。
特に多い問合せは「売りたい」という依頼です。不動産を持っている法人をメインに、数十件単位の案件がきていますね。おそらく、ビットコインで億を超えるような利益を得た層へのアプローチを考えてのことでしょう。価格の変動によって損するリスクを避けるために、取引完了後すぐに現金化するのだと思いますが。
価値のあるもの同士を交換する”新しい場所”を作ったのが、ヘヤジンコイン
Q:予想外に問合せが多かった理由として、どのようなことが考えられますか。
伊藤:そもそもこういう取引の場が今までなかったからだと思っています。取引とは、“価値のあるものと価値のあるものを交換すること”を指しますが、仮想通貨は明らかに価値があり、FXと同じように日本円と交換されていますよね。不動産にも当然価値があるのですが、その価値があるもの同士で交換する場が今までありませんでした。交換する場所をつくったことで、問合せが来たのだと思います。
Q:仮想通貨と不動産の取引は今後増えると思いますか。
伊藤:増えるでしょうね。不動産取引と仮想通貨は相性がいいと思うんです。ビットコインは取引に10分以上の時間がかかるので、コンビニで使えるようになったとしても、使う人はいないでしょう。それに、海外送金の手間*も省ける。僕は、ビットコインの取引の方が銀行での取引よりスムーズだと思っています。だから、仮想通貨は金額の大きい取引*に向いているんです。あとは、単純に仮想通貨の発展に伴い取引量が増えていくのではないでしょうか。
*通常海外送金時には、海外送金手数料と外貨取扱手数料のほかに、両替手数料がかかります。両替手数料は、送金金額が高額であればあるほど高くなるため、ビットコインのような仮想通貨での取引と相性が良いということ。
より”金融商品化”していくと思う — 伊藤代表が見据える不動産の未来像とは
Q:現在扱っている通貨はビットコインのみと聞いています。今後使用できる通貨を増やす予定はありますか。
伊藤:取引通貨は増やしていきたいが、全部対応するというよりは、あくまでもメジャーなビットコインや、安全性の高いと言われているEthereum(イーサリアム)*1とか、NEM(ネム)*2などの有名どころでやっていこうと思います。私の考えでは、生き残る仮想通貨は2~3個に絞り込まれてくると思っているので。
*1、ビットコインの次に時価総額が大きい仮想通貨
*2、仮想通貨のひとつ。コインチェックの流出事件で注目を浴びた。
Q:仮想通貨が不動産業界に与える影響って何かあると思いますか?
伊藤:ブロックチェーン技術は業界に与える影響はあると思いますけど、仮想通貨単体が与える影響っていうのはあまりないんじゃないですかね。僕は、日本円もある種仮想通貨みたいなものだと思っているので。
例えば、一万円紙幣の原価って22円なので、価値で言ったら仮想ですよね。そういう意味で、ビットコインをはじめとする仮想通貨も今の日本円との取引の延長場になるかと思うので、与える影響はあまりないと思います。
Q:では、今後の技術革新によって不動産業界はどのように変わると思いますか。
伊藤:仮想通貨の根本にあるブロックチェーン技術によって、不動産そのものの金融商品化が一層進むと思いますね。ブロックチェーンとは、ウェブ上のセキュリティ性能を飛躍的に高める最新技術です。
例えば今は、1億円の家を買う時って100%の所有権を得るために、1億円払って買いますよね。でも今後、自分の家を証券化して、60%は売って、40%保有した状態で住むとか、債券を家族や親戚が買ってくれたりとか。そういう風に、”所有の形”が変わっていくということが技術的に成り立つようになるのではないかと思います。
Q:つまり、不動産という商品が今後より金融商品化していくということでしょうか。
そうですね。不動産を証券化した投資でJ-REIT(不動産投資法人)があります。投資家たちから集めた資金で、オフィスビルやマンションなどの複数の不動産を購入し、その賃貸収入や売買利益を分配するものです。現在、そこに上場するには、10億円以上の物件規模でないと、証券化のコストが合わないと言われています。
でも今後、ブロックチェーン技術を使ったスマートコントラクトとかを使えば、効率的に物件の保有とか運用に関して採決を取って、一定以上の人が賛成したら物件を売る、というようなことができるようになると思うんです。
そういう風に、物件があたかも会社のように保有されて運用されていく、というような世界がくるんじゃないかなと思っています。