3社の国内不動産テック・スタートアップを紹介

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3社の国内不動産テック・スタートアップを紹介

2018年3月5日(月)に、不動産テック領域に関心を寄せる、スタートアップ企業の関係者を中心にしたイベントが開催されました。主催は、Real Estate Tech Meetup(現・PropTech Meetup)というコミュニティです。第2回目となる今回のイベントは、以下のようなメンバーが登壇者として参加しました。

  • 株式会社ライナフ 代表取締役社長 滝沢潔氏
  • iYell株式会社 代表取締役社長兼CEO 窪田光洋氏
  • シェルフィー株式会社 取締役最高執行責任者 松井将浩氏
  • 株式会社NTTデータ経営研究所 桜井駿氏(司会進行役)

会場は、株式会社LIFULLの本社8階にあるセミナールームです。2017年に、「社名の変更」「本社移転」の発表がありましたが、このセミナールームもリノベーションの対象だったのでしょうか。80名くらいが入れそうな広い1室で、壁一面が、プロジェクターの内容を映し出せるようになっていました。「セミナーなどの講習会、イベント交流会にはもってこいの場所」という印象です。

今回の「Real Estate Tech Meetup(現・PropTech Meetup)」には、3社が登壇しました。イベントでは登壇者それぞれの“不動産愛”が語られ、株式会社クラウドリアルティの鬼頭代表が飛び入りで参加したパネルディスカッションも盛況でした。すべてをお伝えできないのが残念ですが、印象に残る登壇内容を中心に、イベントをレポートしていきます。この記事を読んだ読者に、「自分も参加してみたい」そう感じてもらえると嬉しいです。

現代版の土間『サービスが入ってくる家』

登壇者:滝沢潔氏(株式会社ライナフ/代表取締役社長)

画像参照元:ライナフの公式ニュースリリースより

ライナフは、「スマートロックを生かした不動産テックサービス」を提供する、スタートアップ企業です。代表的な不動産テックサービスに、仲介業務を支援する『スマート物確』『スマート内覧』、シェアリングサービスの『スマート会議室』などがあります。いずれのサービスも、先日に更新された不動産テックのカオスマップに、掲載されているサービスです。

そんな滝沢氏の講演からは、「これからの住宅について」が語られたエピソードをご紹介します。テーマは、「土間の再開発」です。滝沢氏は、土間を「玄関と室内の間にある空間」と説明し、その価値観を再定義しています。この日のイベントでは、情熱的な語り口が非常に印象的でした。

土間は、広さと信用の空間

以前の日本社会で、多くみられた風景を例に挙げます。商店街の酒屋さんが、お米やお酒をお客さん宅へ配達するとき、商品を運び入れる場所の多くは「土間」や「勝手口」でした。土間は、履物を脱ぎ履ぎしたり、簡単な作業や調理ができたりする広さを備えていました。広さを利用し、酒屋さんはお米やお酒を土間へ運び入れていたのです。

酒屋さんと家主は顔見知りであることが多く、両者の間には信用がありました。そのため、家主が留守であっても、酒屋さんは土間や勝手口に入り、お米やお酒を届けて帰ることができたのです。

ライナフは、この土間のメリットを現代に取り入れるため、テクノロジーを駆使しました。それが、「サービスが入ってくる家」です。

一般に、マンションのワンルームや建売住宅などにみられる玄関は、以前の土間よりも狭い空間です。そこに、ライナフは土間のような広い空間を作りだしました。作りだしたのは広い空間だけではありません。現代の物流業者と家主の間に、安心できる空間も作りだしたのです。ポイントは、以下の3個所にあります。

『スマートロック付き玄関ドア』は、玄関ドアのディンプルキーなどを持たない業者でも、暗証番号の入力や、遠隔操作などによって開錠できる点がメリットです。宅内に設置された『クラウドカメラ』は、配達や荷物の様子を確認すると同時に、セキュリティの役割も担います。室内ドアは『錠前付き室内ドア』です。スマートロックになっていないので、鍵を持つ住人以外の侵入を防ぎ、住人のプライバシーを保ちます。

これらの仕組みは、住人に、「業者が荷物を運び入れられる広さ」「留守宅の安全」を同時に提供しました。下の図でいうと、水色で囲われた部分が現代版の土間となるわけです。

2018年3月より、「サービスの入ってくる家」は、順次、展開されます。日本で最初の導入物件は、東京都大田区にある賃貸マンション「ジニア大森西」です。共有部分のエントランスには、ライナフの自動エントランスサービスである『NinjaEntrance』」が、全36の居室には、ライナフのスマートロックである『NinjaLock」が設置されています。

この物件では、部屋を留守にしていても、“現代版の土間”に荷物が届いたり、留守宅のハウスキーピングを依頼したりすることができるのです。2018年3月現在は、以下の5つのサービスが対応しています。

  • パルシステム/生活協同組合パルシステム東京
  • リネット/株式会社ホワイトプラス
  • honestbee/honestbee株式会社
  • タスカジ/株式会社タスカジ
  • ベアーズ/株式会社ベアーズ

 

宅配業者の再配達が社会問題として取り上げられるいま、『サービスが入ってくる家』は、再配達の問題を解決する手段の1つにも、なりえそうですね。時代のニーズを的確にとらえたサービス、という印象を持ちました。


 

住宅ローンテックベンチャー『iYellネオバンク構想』を語る

登壇者:窪田光洋氏(iYell株式会社/代表取締役社長兼CEO)

iYell(イエール)は、『住宅ローンの窓口』『いえーる コンシェル』『いえーる すみかる』などの不動産テックサービスが代表的な企業です。それらは、先日に更新された不動産テックのカオスマップにも掲載されています。

代表の窪田氏は、新卒で入社したSBIグループのモーゲージバンク(住宅ローンを専門に扱う金融機関)で、最年少役員を務めた人物です。住宅ローンにかかわるすべての人の困りごとを解決すべく、iYellを起業しました。現在は、「日本一住宅ローンに詳しい男」として紹介されることもあるのだとか。

そんな窪田氏の講演内容から、本記事でご紹介するのは住宅ローンの未来について語られた、『iYellネオバンク構想』についてです。

iYellネオバンク構想

住宅ローンについては、「ユーザー」「企業」「国」など、かかわり合いのある、ほとんどすべての人が困っています

窪田氏は、その困っている部分を「同時に解決することが重要」であるとも語りました。そのために、iYellが何をするのかというと、プラットフォームの提供です。以下、プラットフォームが提供されることによるメリットを3つに整理して説明します。

  • 企業のメリット
  • 銀行のメリット
  • ユーザーのメリット

まずは、企業のメリットです。

『SUMAVE住宅ローン』が発売?

iYellネオバンク構想が実現すると、A社(企業名)住宅ローンのような商品を、あらゆる企業様が販売できるようになります。iYellがその裏側をすべて担当することで、A社はすぐに住宅ローンを販売できる仕組みです。不動産会社さんの場合なら、これまで住宅ローンにかかわっていた営業マンは、その業務のすべてから解放されます

SUMAVEは社名ではなくウェブサイト名ですが、たとえば、『SUMAVE住宅ローン』という金融商品の販売も可能になるわけです。

※『SUMAVE住宅ローン』の発売予定は一切ありません。

iYellの住宅ローン申請は8割が通る

不動産会社のメリットは、業務の効率化だけではありません。iYellが住宅ローンを申請した場合、審査の通過率は80%を超えます。これが結果的に、不動産売買の成約率を高めるのです。

一般に、不動産会社の営業マンが住宅ローンを申請した場合、その6、7割くらいが審査を通過します。これが、弊社の場合は8割に達します

不動産会社の営業マンは、当然ですが営業が本業です。住宅ローンまわりの業務に費やせる時間は限られています。一方、iYellは住宅ローンまわりの業務が本業です。多くの時間を住宅ローンまわりの業務に費やせます。専門性の高いスタッフが、審査通過のために多くの時間を割くわけです。アドバイスが的確だったり、準備が入念だったりするので、iYellの住宅ローン申請は高い割合で審査を通過します。

住宅ローン審査に通る確率が高くなることのメリット

審査に通る確率が高くなれば、「家を買える人=顧客」が増やせるわけです。顧客の数が増えても、営業マンの仕事量が以前と変わらなければ、機会損失へつながります。しかし、iYellネオバンク構想なら、その心配がいりません。

不動産会社の営業マンは、これまで費やしていた住宅ローンまわりの業務がなくなります。なくなったことで生まれた時間は、本来の営業活動や顧客のサポート業務へ費やすことができるので、これが、結果的にコンバージョンレートを上げるわけです

社名は明らかにされませんでしたが、iYellが提供するサービスを使い、自社の名前で住宅ローンを販売している企業がすでに存在します。iYellがその裏側のすべてを対応ていることも、窪田氏より明らかにされました。

銀行のメリットは、本業である資産運用への専念

iYellネオバンク構想が実現すると、銀行は本業である資産運用へ専念できます。iYellが銀行に替わり、住宅ローンの販売や債券管理を担うのです。iYellが集めた住宅ローンの債権は、証券化して国債と同じような感覚で銀行に購入、運用をしてもらいます。

実現のためなら、窪田氏は、銀行代理業免許の取得もいとわない姿勢です。これを突き詰め、理想を追い求めると、次のような可能性が見えてきます。

ユーザーのメリットは、金利0%の住宅ローンが借りられること

iYellネオバンク構想が実現すると、金利0%の住宅ローンが組成されるかもしれません。マイナス金利のいま、競争原理が働くことで、窪田氏は、「金利0%の住宅ローンを作れるかもしれない」と語りました。

80%以上の確率で住宅ローンの審査が通過し、金利0%の住宅ローンを借りられる世界が実現したなら、家を建てたいと願う多くの人が幸せになりそうです。それは、窪田氏の願いでもありました。

iYellネオバンク構想には、起業前に窪田氏が味わった「債権管理での苦い経験の数々」や、金融業界の人間として窪田氏が過ごした、「リーマン・ショック後の日々」が生かされています。窪田氏が実現を目指すのは、住宅ローンにかかわるすべての人が幸せになる世界です。


 

店舗内装の会社と発注者をつなぐ建設テック『SHELFY』

登壇者:松井将浩氏(シェルフィー株式会社/取締役最高執行責任者)

「グラミン銀行が好き」と話す松井氏は、学生時代に東南アジアでITの影響力を目の当たりにします。ITの可能性に魅了された松井氏が出会ったのは、呂俊輝(ロイ シュンキ)氏でした。シェルフィーを創業したばかりの呂氏と、当時の松井氏は意気投合します。松井氏はシェルフィーの一員になり、現在は取締役最高執行責任者を務める人物です。

講演では、建設業界の実情を丁寧に話してくれました。日本で2番目に大きな市場であること、今は危機的な状況にあること、建設需要がプラス4兆円あるにもかかわらず労働者数は過去5年で30%減少したこと、建材費は35%も高騰していること。そんななかで、『SHELFY』のマッチングプラットフォームは、依頼総額が250億円を超えていること。

本記事では、「抱える課題が不動産テック領域と似ている建設テック領域で、右肩上がりの成長をみせる、スタートアップ企業の取り組み事例」として、松井氏の講演内容をご紹介できればと思います。

『SHELFY』は、不動産テックのカオスマップで、リフォーム・リノベーションのジャンルに掲載されているサービスです。建設業界のサービスではありますが、不動産業界と密接にかかわっています。

案件獲得戦略のほとんどをシェルフィーへ依頼する企業も

『SHELFY』は、店舗内装の会社と発注者をつなぐプラットフォームです。紹介された事例では、カラオケ店舗のパセラなどを運営している、株式会社ニュートンの事例が代表的でした。

ニュートンは、出店などの際に必ずシェルフィーを利用しています。2018年3月下旬時点で、「来年度の案件獲得戦略のほとんどをシェルフィーへ依頼している」企業もあるそうです。サービスが好調な理由の1つについて、松井氏は次のように語りました。

建設業界には、ITやネットだけは攻略しきれない点がありますが、それは、不動産業界も同じように感じています

就業者の30%以上が55歳を超える建設業界

出典元:建設業の現状について/国土交通省(2017年)

建設業界では、就労者の30%以上が55歳を超えています。スマホどころかパソコンすら存在しない時代を戦い抜いて、今日へたどり着いた世代です

少し古いデータですが、2014年に実施された総務省統計局調査によると、不動産業界に就労する55歳以上の割合は42.8%でした。松井氏は、建設業界と不動産業界の類似点として「就業者の高齢化」を挙げました。つまり、「不動産業界(不動産テック領域)も、ウェブやITだけでは攻略しきれない点があるのではないか」といいたかったのではないでしょうか。

決裁権などを持つ彼らを相手に商談へ行っても、なかなかこちらの話を聞いてもらえません。しかし、振り返ってみると、私たちの話を聞いてもらえたときは、「1時間のアポで40分くらいはビジョンを語る」のようなときでした。ITのメリットだけを訴えるのではなく、「なぜテクノロジーを活用するのか」「建設業界にこんな未来をもたらしたい」などを丁寧に話したとき、耳を傾けてもらえた気がします

「ウェブやITだけでは攻略しきれない点」の打開策として印象的だったのは、同社が、ウェブ以外のマッチングにも精力的であった点です。

リアル世界でのマッチングにも注力

画像参照元:株式会社シェルフィーHP

たとえば、同社は、企業の出店担当者同士をつなぐイベントを開催しています。このときにプレゼンをしたのは、「串カツ田中」「鳥貴族」の店舗開発担当者です(同社のHPより)。イベントは、属人的になりがちな店舗開発のノウハウに、新しい価値観を取り入れることが目的になっています。

シェルフィーは、こうした店舗開発者向けの交流イベントの開催に、積極的な姿勢で取り組む企業です。開催のペースは2か月に1回程度で、2017年の11月末には、「デベロッパー」「業者」「出店者」を集めた300名規模のイベントを開催しています。


 

まとめ

テクノロジーで業界を変えようとするシェルフィーが、リアルイベントへ注力している事実は意外でした。iYellの窪田氏は、なかなか変わらない環境にいるなかで、変わりたいと思っている人との出会いを求めていました。

「自分も一緒にやりたい」と手を上げてくれる仲間、パートナー企業様との出会いがほしいですね。究極的には、何をやるかよりも、誰とやるかのほうが重要だと思っています(窪田氏)

ライナフの滝沢氏が訴えたことも、現実世界でのつながりや出会いの重要性でした。

ライナフが飛躍した節目のタイミングを振り返ると、企業の素敵なご担当者様との出会いを抜きに、語れません。何が素敵かというと、そのかたの、「業界が抱える課題を自分事として受け止める当事者意識や課題意識」ですね。その意識が、経営陣の決断を左右するくらいに情熱的であったときは、つねに新しいものを生み出してきたように感じます(滝沢氏)

Real Estate Tech Meetup(現・PropTech Meetup)の目的の1つは、スタートアップ企業と大手企業をつなぐこと。起業家のチャレンジを後押しし、不動産テック領域を包括的に盛り上げたいという狙いがあります。そうした機会を、定期的に設けようとする試みもまた、リアル世界でのマッチングの重要性を訴えているのかもしれませんね。

第3回となる次回のイベントは、2018年4月に開催される予定です。取材できるようなら、そのときの内容もSUMAVEで紹介したいと考えています。

※このコミュニティは、現在、PropTech Meetupという名称で活動が続けられています。


 

株式会社ライナフ

画像参照元:株式会社ライナフHP

※以下、同社ホームページより引用

設立:2014年11月
代表者:滝沢 潔
事業概要:不動産管理向けシステムおよびアプリの開発、不動産活用サイトの運営/不動産管理向けハードウェアの製造・販売


 

iYell株式会社

画像参照元:iYell株式会社HP

※以下、同社ホームページより引用

設立:2016年5月12日
代表者:窪田 光洋
事業概要:不動産会社紹介サイト『いえーる コンシェル』の運営/住生活情報マガジン『いえーる すみかる』の運営/不動産投資会社紹介サイト『いえーる コンシェル 不動産投資版』の運営/住宅ローン情報マガジン『いえーる すみかる 住宅ローン』の運営



シェルフィー株式会社

画像参照元:シェルフィー株式会社HP

※以下、同社ホームページより引用

設立:2014年6月10日
代表者:呂俊輝(ロイ シュンキ)
事業概要:店舗デザイン・内装工事のマッチングサービス/SHELFYの運営/店舗づくりに関するオウンドメディア店舗HACKSの運営


 

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