【徹底解説】時価総額が約2,500億円と噂されるアメリカの不動産テックベンチャーCompassとは

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【徹底解説】時価総額が約2,500億円と噂されるアメリカの不動産テックベンチャーCompassとは

はじめに

2017年12月7日、ある企業への約500億円(4.5億ドル)という出資報道が、話題をさらいました。この出資額は、不動産テック企業へ一度に出資される額として、当時の史上最高額を記録しました。

出資をしたのは、ソフトバンクグループの私募ファンドSoftbank Vision Fund(ソフトバンク ビジョン ファンド)です。出資を獲得したのは、アメリカの不動産テック企業であるCompass(コンパス)です。

今回は、不動産テックの先進国であるアメリカで、大きな話題となっているCompassを徹底的に解説していきます。

目次

Compassとは

Compassとは、ゴールドマン・サックス証券株式会社(以下、ゴールドマン・サックス)の元COO (最高執行責任者)であるRobert Reffkin(ロバート・リフキン)氏と、GoogleでエンジニアをしていたOri Allon(オリ・アロン)氏によって誕生した、アメリカのスタートアップ企業です。

同社は、2012年に「Urban Compass」として創業しました。2018年2月現在の主なサービスは、売買物件の不動産仲介事業です。

Compassの出資者に名を連ねる企業や著名人

Compassは、サービスを公開する以前より、スタートアップ企業としては異例の約9億円の資金を集めました。投資をした企業や著名人の顔ぶれは、以下のような、そうそうたる面々です。

  • Reffkin氏の古巣であるゴールドマン・サックス
  • アメリカン・エキスプレスのCEO(最高経営責任者)、Kenneth Chenault(ケネス・シュノルト)氏
  • セールスフォース・ドットコムのCEO、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏

スタートアップ企業ながらCompassの時価総額は約2,500億円

Softbank Vision Fundから約500億円の出資を得たCompassですが、同時期にフィデリティグループからの約110億円を調達したことも発表しています。噂される時価総額は、約2,500億円(22億ドル)です。

2,500億円というと、数年前に、新国立競技場の建設費が物議をかもしました。当時に報道された建設予定費は、2,520億円です。

言いかえれば、「Compassのサービスには、新国立競技場を建設できるような市場価値がある」そういうことになります。一体、Compassの「売買物件の不動産仲介事業」とは、どんなサービスなのでしょうか。

Compassのサービスとは

Compassの主要事業は、不動産売買、賃貸に必要と想定される情報を集約、可視化したプラットフォームの運営を基盤とした不動産仲介業です。ここでいう不動産仲介とは、「顧客とエージェント(代理人)、あるいはブローカー(不動産仲介会社)をつなぐ」という意味での不動産仲介です。

エージェント・ブローカーの役割

エージェントとは、ブローカーの代役として不動産営業をできる有資格者(個人)を指します。ブローカーとは、事業所を持ち、不動産取引をできる有資格者(個人)、ないしは不動産仲介会社のことです。

エージェント・ブローカーの契約形態

エージェントは、成功報酬制でブローカーと契約を結びます。自己負担、自己責任で営業をするのが、エージェントとブローカーの基本です。彼らは、賃貸物件の仲介もしますが、専門は売買物件の仲介です。

ブローカーアソシエイト

ブローカーアソシエイトと呼ばれる、他のブローカーのために働くブローカーも存在します。多くのブローカーは、若いうちにブローカーアソシエイトとして大手ブローカーの名前の下で働き、経験やコネを手に入れるのが通例となっています。

アメリカでは、彼らのような不動産営業を専門としている エージェントが、一般の人にとって大変に身近な存在です。一般の人が賃貸、ないしは、売買の不動産取引をする際には、エージェントと直接やりとりをします。場合によっては、ブローカーとも取引することがあるようです。

  • エージェント:成功報酬制でブローカーと契約を結び、不動産営業をするブローカーの代理人
  • ブローカー:不動産仲介会社、あるいは不動産仲介をする個人
  • ブローカーアソシエイト:大手ブローカーの下で働くブローカー
  • リスティングエージェント:その物件を担当しているエージェントとブローカーのこと

Compassは、一般の人(顧客)とエージェント(あるいはブローカー)の間に入り、プラットフォーム上で彼らをつなげることを生業としています。どんなプラットフォームで彼らをつなげているのでしょうか。

Compassのプラットフォーム

Compassのプラットフォームには、前述のエージェントあるいはブローカーである、リスティングエージェントの一覧が掲載されています。以下は、一例です。

Compass:https://www.compass.com/agents/nyc/christine-blackburn/

上のキャプチャ画像は、Compassのウェブサイトで見たアソシエイトブローカーのChristine Blackburn氏のプロフィールページです。人柄が想像できるよう、家族と過ごす動画が掲載されていました。プライベートを動画にして顧客へ見せる演出は、「わかりやすい日本のサービスとの違い」の1つかもしれません。

そのほかの特徴として目についたのは、掲載されている人物を判断するための情報が可視化されている点です。経歴、学歴、受賞歴、得意分野、過去の売買経験、過去の契約履歴、どの物件のエージェントをしているかも紹介されていました。

Christine Blackburn氏のようなリスティングエージェントがアメリカ全土にいるわけですが、Compassがサービスを展開しているのはアメリカの11都市です。

Compassがサービスを展開している都市

文化的な背景を少しご説明すると、アメリカでは、中古物件の取引が活発です。家は「借りるもの」よりも「買う(所有する)もの」という文化が根付いています。

この「家は買うもの」という文化が影響してか、Compassの賃貸物件は、ニューヨークとリゾート地で有名なハンプトンズの2都市の取り扱いしかなく、他の9都市(画像参照)では、売買物件のみの扱いとなっています。

賃貸物件を扱っているのは、以下の2都市。※地図の左から順番に

  • ニューヨーク
  • ハンプトンズ(リゾート地)

売買物件のみ扱っているのが、以下の9都市。※地図の左から順番に

  • サンフランシスコ
  • サンタバーバラ
  • モンテシート
  • ロサンゼルス
  • アスペン
  • シカゴ
  • マイアミ
  • ワシントンDC
  • グレーターボストン

次は、Compassのプラットフォームに掲載されている物件の情報をご紹介します。Compassが扱っている物件は、売買と賃貸の物件です。Compassのプラットフォームを調べてみると、1つの特徴が見えてきました。それは、高級な物件を扱うサービスである、という特徴です。

Compassで借りられる『賃貸物件』とは

まずは、賃貸物件です。Compassでは、ニューヨークとハンプトンで賃貸物件を探せます。たとえば、ニューヨークの最高級住宅地アッパーイーストサイドで、ワンルームの賃貸物件を探してみましょう。表示されたのは、賃料が一ヶ月で約17万円から約1,000万円の物件です。

同じくニューヨークの高級住宅地以外でも探してみました。対象は、アッパーイーストサイドに比べて庶民的な住宅地だといわれている、ブルックリン地区です。もっとも賃料の安い物件は、ワンルームで約13.5万円でした(写真付きの掲載物件に限る)。

この、ワンルームで約13.5万円は、ブルックリン地区で借りられる安い賃料として、相場なのでしょうか。アメリカの別サイトで、同じ地域の賃貸物件を探してみます。

【比較】アメリカの別サイトであるZillowで地域を検索すると

アメリカの不動産テックといえば、Zillow(ジロー)を思い浮かべる読者もいるのではないでしょうか。不動産テックの分野では、企業規模やサービスを急速に拡大させていることで有名です。Zillowは、アメリカ全土で1億件もの物件情報を扱っています。そんなZillowでブルックリン地区の賃貸物件を探したら、はたしていくらの賃料が最安値なのか。確認してみたところ、もっとも安い賃料は約9万円でした。Compassとの賃料差は4.5万円になります。

Compassで売り買いできる『売買物件』とは

売買物件も見てみましょう。たとえば、別荘地として人気のリゾート地ハンプトンズで、もっとも高い売値をつけていたのは約61億円の物件でした。ニューヨークでは、売値が約68億円のマンションを見つけました。この物件は、共益費だけで一ヶ月に約160万円、年間1,900万円の出費という高額ぶりです。

こうした60億円以上の売買物件は、日本国内のサイト上に掲載されているのでしょうか。同じ価格帯の売買物件を探してみます。

【比較】日本のサイトで同額の売買物件を探すと

日本の大手物件検索サイトを利用してみましたが、数十億円の物件は見当たりませんでした。そこで、検索範囲を広げてみます。「60億円 売買」「61億円 不動産」のキーワードをインターネット検索してみました。検索結果に表示されたのはニュース報道でした。

2016年6月に東急不動産が購入した物件は、「60億円規模」として報道されていました。物件は、大阪府大阪市の繁華街である心斎橋筋商店街の一画で、土地面積約440平方メールの旧ヤマハ心斎橋店の跡地です。

西日本鉄道が、約61億円で土地と建物を取得したこともネットのニュースになっていました(2017年8月の産経ニュースより)。場所は、福岡県福岡市です。旧大名小跡地に隣接する土地で、広さが約2,000平方メートルもあります。建物は地上7階建てだそうです。

非常に高額だからか、日本ではニュースになる価格帯の不動産売買が、Compassでは、サイトを通じた個人が取引できるようになっているわけです。

Compassはラグジュアリーホームセラー

つまり、Compassに掲載されている物件は賃貸や売買を問わず、とりわけ高級な物件なのです。Compassはアメリカ人に「ラグジュアリーホームセラー」と呼ばれています。その理由は、サイト上で扱う物件価格に、1つの要因があると考えられそうです。

しかし、高級な物件を扱うことが理由で、Compassの時価総額が約2,500億円もの価値に達するのでしょうか。次は、Compassが注目を浴びる理由を考えてみます。

Compassが注目を浴びる4つの理由

大きくわけると、次の4つが考えられます。

  1. 顧客にとってサービスが使いやすい
  2. エージェントやブローカーも使いやすい
  3. 契約を結ぶための手助けとして非常に便利
  4. 創業者2人の経歴がすごすぎる

1つずつ、見ていきましょう。

1. 顧客にとってサービスが使いやすい

住宅購入を検討している人や、賃貸物件を探している人にとって使いやすい理由として、情報の一元化と可視化が挙げられます。

Compassのウェブサイトを訪れるか、あるいは『Compass Real Estate – Homes』というアプリをスマホにインストールすると、以下の情報を閲覧することができます。

  • 物件情報(写真、価格、築年数、付随施設、同じマンションの他の部屋の空室情報、過去の価格変動等)
  • エージェント・ブローカー情報(その物件を取り扱っているすべてのエージェント・ブローカーのリスト、彼らの写真付きプロフィール等)
  • 近隣情報(近くの駅、シッピングエリア、公園、観光施設、マーケット、ライブハウス、カフェ、学区、学校の教育レベルと安全性等)

うえの3つのなかでも、とくに、充実しているのが近隣情報です。Compassは、扱っている物件がある11都市のすべてで、近隣情報をまとめたページを自社作成しています。掲載されているのは、地区ごとにどんなものがあって、そこで何ができるのか、という数多くの写真です。この情報量と質が、ユーザーのニーズに寄り添っていることから、「使いやすいサービスである」と人気が出ています。

気になる方は、実際にCompassが作っている近隣情報紹介ページへジャンプして、体験してみてください。

2. エージェントやブローカーも使いやすい

今まで、顧客用に情報を一元化したサービスは存在しましたが、エージェント専用のアプリも出している不動産テック企業はありませんでした。エージェント用のアプリ『Compass Markets』では、2013年からの住宅価格の中央値がグラフ付きで可視化されています。以下は、そのサービスのキャプチャ画像の一例です。

たとえば、Upper East Side → Active(現状市場に出ていて取引可能な状態にある)→ Median Price(中央値)→ 1 Bed Roomを順々にクリックすれば、「アッパーイーストサイドの市場に出ている、1ベッドルームのリアルタイムでの中央値と、過去数年間の中央値の変動」を瞬時に確認できます。これは、エージェントやブローカーにとって、画期的なことといえるでしょう。

こうした、価格の変動などを手軽に確認できるようなエージェント専用のアプリは、アメリカ国内にこれまで存在しませんでした。 

アプリを実現させるために、住宅価格などのデータは欠かせなかったのでしょう。Compassは、このデータを集めるために、200人以上のエージェントを大手ブローカーから引き抜いています。ところが、この引き抜き行為は非難の的となり、訴訟に発展しました。

2014年に訴えを起こしたのは、ニューヨーク大手不動産会社であるCiti Habitatsです。2015年には、同じく、ニューヨーク大手不動産会社のThe Corcocan Groupが「重要な人材を不正に盗み取られた」としてCompassを訴えます。

裁判結果は、証拠不十分で無罪。Compassは、「引き続き通常の営業活動をすること」「引き抜きを続けること」を許可されます。Reffkin氏は、Compassへの批判に対し、インタビューでこう述べました。

エージェントは独立した契約者なので、彼らがどこで働こうが、それは彼らの自由です。(略) 彼らは本来会社を移る権利を持っています

この引き抜きの一件は、「Compassがエージェントやブローカーも使いやすいサービスである」ことの要因にならないでしょうか。

たとえば、引き抜かれたエージェントたちが、以下のような改善案を出します。

  • 「このようなサービスがあれば、自分たちは使いやすい」
  • 「この機能は、ここがこう改善したらもっと使いやすい」

そうした改善案が生かされた結果として、エージェント専用のアプリが完成しているのだとしたら、Compassがエージェントにとって使いやすいサービスを提供できるのは当然の成り行きのように感じるのです。

利用者に使いやすいサービスを提供するというCompassの姿勢は、Reffkin氏のメッセージにも表れています。次は、Reffkin氏のメッセージより、Compassが注目を浴びる理由に迫ります。

3. 契約を結ぶための手助けとして非常に便利


アメリカでは、他社に先駆けてZillowやRedfin(レッドフィン)などが、不動産情報を一元化したり可視化したりするサービスを展開しています。Compassのサービスは何が違うのでしょうか。この問いに対するReffkin氏の答えは、Compassが注目を浴びる理由の1つでもあります。

データ収集系の不動産情報サイトは検索に力を入れていますが、私たちは「全体の業務の効率化」に力を入れています

Compassの目的は検索をしやすくすることではなく、「契約に付随する業務の流れを効率化して交渉の役に立つこと」なのです。つまり、「シンプルに、とても便利」なサービスだから、注目を浴びていると考えられます。

4. 創業者2人の経歴がすごすぎる

Reffkin 氏は、1999年に4年制のコロンビア大学を2年で卒業し、戦略系コンサルティングファームの最高峰といわれるマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。その2年後に、コロンビア大学に戻ります。

MBAを取得し、卒業と同時に1848年から続く世界有数の投資銀行であるラザードに入社します。ラザードからホワイトハウス・フェロー1のアシスタントとなり、1年間の現場研修を受ける制度を経験し、2006年から金融界に進出。ゴールドマン・サックスのヴァイスプレジデント2を5年勤めます。

その後に任命されたのが、同社のCOOです。1年勤めたのちに退職しました。そして、2012年に現在のCompassである、Urban Compassの共同創業者となりました。

共同創業者のもう一人、Allon氏はエンジアです。彼は26歳の頃、ニューサウスウェールズ大学で博士課程の学生をしていました。在学中に『Orion』というアルゴリズムを作り上げ、特許を取得。2006年、その『Orion』はGoogleによって買収されます。2009年、Googleは『Orion』を”Google検索”の主要アルゴリズムとして採用。こうした優秀さから、Twitter、Yahoo、Googleの3社が、Allon氏を入札式で取り合ったエピソードもあります。

Reffkin氏を言い換えるなら、「ビジネス」と「お金の流れ」を熟知した金融マンでしょう。Allon氏は、誰もがほしがる世界トップクラスのエンジニアです。つまり、Compassは超優秀な最強タッグによって牽引される、スタートアップ企業なのです。

この申し分のない創業者の経歴は、投資家の期待と信頼を得る要因だと考えられています。同時に、世間の注目を浴びる理由の1つとなったのです。

*1、大統領補佐官、副大統領、閣僚などの政府高官

*2、ヴァイスプレジデントとは、直訳では副社長という意味になりますが、ゴールドマン・サックスでのヴァイスプレジデントは日本でいう本部長、部長クラスのことを指しています。

Compassに直接、疑問をぶつけてみると

噂の真相を確かめるために、Compassへ以下の内容のメールを送り、簡易取材を申し込んでみました。

しかし、記事公開時点でCompassから回答を得られていません。進展があれば、何かのカタチでお伝えしたいと思います。

スマホでCompassを使った使用感

消費者目線でCompassがどう魅力的なのかを調べるべく、実際に編集部でイチロー選手も住んでいたというニューヨークの最高級住宅地アッパーイーストサイドにある家を探してみました。

Compassはラグジュアリー物件を扱うことがわかったので、家賃の予算は110万円くらいの設定です。間取りはツーベッドルームを想定しました。以下の動画で、スマホによるCompassでの賃貸物件探しを疑似体験してください。

 

Compassが競合となりそうな日本のサービスとは

Softbank Vision Fundから得た資金の目的について、Reffkin氏は、「2〜3年以内に世界の主要都市のすべてでサービス拡大するため」であると述べています。

この発言から、Compassが日本へ上陸する可能性は十分に考えられます。もし、Compassが日本に上陸したら、日本のどういったサービスが競合するのでしょうか。

Compassはカスタマー向け(To C)と、不動産業者向け(To B)の両方のサービスを展開しているので、それぞれで見てみましょう。

カスタマー向け(To C)の場合だと

高級物件を扱っているという意味では、KEN RENTなどの高級賃貸サイトや、そのほか高級物件を扱っていて、かつ学区や地域情報などを集約・掲載しているスマイティなどが想定されるのではないでしょうか。

また、賃貸・売買両方の物件を扱っており、かつ知名度が高い大手のLIFULL HOME'S(ライフルホームズ)SUUMO(スーモ)at home(アットホーム)などの物件検索サイトも、大なり小なりの影響を受けることは避けられないはずです。

不動産業者向け(To B)の場合だと

国土交通省は、「土地総合情報システム」の整備を進めています。これまでの「不動産価格が査定担当者の経験や勘に大きく左右されがちである」という現状を打開するためです。

不動産価格の透明化を掲げた「土地総合情報システム」の整備計画がうまくいったら、Compassの一番の競合相手は、国土交通省になるのかもしれません。

現在の日本は、「地域の犯罪件数を管理しているのは各都道府県の警察、学校の偏差値は各地域で運営されている地域情報サイトが独自に調査、掲載している」というような状況です。散らばった情報を集めることで一元化はできますが、一朝一夕に解決するものではないでしょう。となると、Compassの日本進出の鍵はこのあたりにあるのかもしれません。

まとめ

Compassの「地図から家を探す」機能は、不動産テック先進国のIT企業ならではの点でした。物件の周辺地域を紹介するページには、「地域の四季がどんなふうに移り変わるか」「どんな催し物があるか」などの情報が満載であったことも印象に残りました。これらは、まだ日本に浸透していないシステムでありサービス、アメリカの不動産テックの優位性といえるでしょう。

視点を変えて比較してみると、国内の物件検索サイトの優位性にも気づきます。物件検索の条件フィルター機能です。Compassの条件フィルターには、「ジム付き」「ペット可」など、19項目が選べました。一方、国内の物件検索サイトとしては大手の1つである SUUMOなどでは、「南向き」「追い炊き風呂」「温水洗浄便座」「病院が近くにある」「DIY可能」など、100を超える詳細な条件フィルターがあります。

「希望の部屋を探す」という日本顧客の立場になって考えると、細かい希望に合わせて検索できる点は、日本の物件検索サイトの強みです。ただし、「検索の利便性でCompassは勝負をしていない」事実を忘れてはいけません。Reffkin氏の言葉を再び引用します。

――私たちは、全体の業務の効率化に力を入れています

さらに、こうも言っています。

外注を一切せずに、社内のエンジニアに、1つの一貫したシステムとプラットフォームを作らせている

内製にこだわるこの姿勢は、サービスの質を追求する志の高さを連想させます。生み出されるプラットフォームは、「契約に付随する業務の流れを効率化し、交渉の役に立つ」サービスとして、不動産テックを推進していくのでしょう。今後も、その動向に注目です。

 

 

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