Zillow Groupがオンライン買取再販業に参入!市場の反応とCEOラスコフ氏の狙いとは

  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • LINE
Zillow Groupがオンライン買取再販業に参入!市場の反応とCEOラスコフ氏の狙いとは

はじめに

2018年4月13日、不動産検索サイトを運営するZIllow Group(ジロウ・グループ)が、Instant Offers(インスタント・オファーズ)というオンライン買取再販サービスの提供を正式に開始することを発表しました。

オンライン買取再販とは、「売主にオンライン上で物件情報について入力してもらい、アルゴリズムを用いて物件価格を査定し、数日以内に買い手が現金でオファーを送る。そうして中古住宅を買取り、修繕・改築してから、再度販売を行うビジネスモデル」のことを指します。このオンライン買取再販は、Zillow Groupとは別に、創業からたった2年8ヶ月でユニコーン企業に成長したOpendoor(オープンドア)の主要事業としても有名です。

しかし、このZillow Groupがオンライン買取再販サービスの提供開始を発表した翌日、同社の株価は9%ほど下落。Zillow Groupのオンライン買取再販業への進出に対する投資家の評価は芳しくないようです。その要因は、どこにあるのか。Zillow Groupの今回の参入に対する評価、そして同社の新サービスの特徴についてご紹介します。

*評価額が10億ドル(約1100億円)以上の未上場スタートアップ企業を指します。

目次

Zillow Groupとは

【出典】Zillow:https://www.youtube.com/watch?v=dCrURbf4o_s&ab_channel=Zillow

Zillow Groupは、2005年に創業されたアメリカ最大規模の不動産検索サイト「Zillow」を運営する不動産テック企業です。

同社は、過去の記事「アメリカの不動産サイトTruliaがスゴイ…不動産マーケットの情報の透明性を考える」でご紹介したTrulia(トゥルーリア)を2014年に約3670億円(≒35億ドル)で買収したことで話題になりました。

Truliaは、地域周辺の物件とその平均料金、価格推移はもちろん、犯罪率や交通量、学校までの距離、レストランの数、居住者の年齢層など、ありとあらゆる情報をGoogleマップ上でビジュアル化されている不動産検索サイトです。

Trulia以外にも、2012年に地図からの不動産検索に強みを持っているHotPads(ホットパッズ)を、2013年にはニューヨークの物件情報に強いStreetEasy(ストリート・イージー)を買収。こうした拡充戦略が功を奏し、2017年度のグループ全体の収益は2億1370万ドル(235億円)を記録。「Zillow」のグループサイトの月間平均ユニークユーザー数は、計1億7500万人にも上ります。

【出典】Zillow:http://investors.zillowgroup.com/releases.cfm#events

 

不動産検索サイトの買収を重ね、規模拡大を推進してきたZillow Groupですが、今回のオンライン買取再販業への参入は、過去にZillow Groupが行ってきた決断とは”ある点で”大きく異なっています。そしてそれが、今回の株価下落の大きな要因となっているようです。

新サービス「Instant Offers」とは

このZillowが開始したオンライン買取再販サービス「Instant Offers(インスタント・オファーズ)」とは、まず売り主が売りたい家の情報をZillowのサイト上で入力します。すると、48時間以内にZillowのサイト上にいる投資家もしくはZillow Groupから、現金による即時購入の申し出をもらえるというサービスです。Instant Offersが、Opendoorなどの他のオンライン再販サービスと異なる一つの点は、必ずしも自社で買い取って修繕と再販を行うわけではない、というところにあります。Zillow Groupは、自社が購入に至った場合に限り、90日以内に修繕と再販の両方を完了したい、と述べています。

*48時間以内のオファーは仮の査定額によるもの。この際に、訪問によるインスペクションの日程を確定し、インスペクションが済んでから、実際の査定額を確定します。

Zillow Groupによると、2018年中にはアリゾナ州のフェニックスとネバダ州のラスベガスでサービスを開始するとしています。実はこのインスタント・オファーズの正式提供発表の約1年前より、Zillow Groupは同サービスの試験運用を行なってきました。対象地域は、フェニックスとフロリダ州のオーランド。Zillow GroupのCEOであるSpencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏は、アメリカのニュース放送専門局のCNBCの取材に対して、今回の進出は、試験運用での手応えをつかんでのことだと発言しています。

家を売りたい家主が、インスタント・オファーズを利用する際に、Zillowのサイト上で提出が必要な情報は、「住所、築年数や間取り」などの住宅の基本情報と、「内装・外装」の写真。加えて「リフォーム・リノベーション歴について」もいくつかの質問項目があるようです。これらの情報を提出すると、数日以内にZillowから不動産鑑定士が家のインスペクションをするために派遣され、価格を確定します。

同サービスの特徴は、売り手がZillow経由で投資家ないしはZillow Groupから査定価格を受け取ると同時に、従来の不動産売買仲介業会社(エージェント)からの査定価格も出してもらうことができる点にあります。これにより、売り手はZillow経由の現金による申し出価格と、エージェントによる査定価格を比べて判断することができます。

売り手による価格査定とインスペクションの申請は無料。しかし実際に家を売る契約を履行する場合は、手数料や修繕費用がかかると書かれています。実際にどれくらいの仲介手数料がかかるかは記載されていませんが、同業他社のOpendoorがだいたい7〜8%の仲介手数料を取っているので、それくらいではないかと予想されます。査定価格に納得がいかない場合は、査定価格の確定後に「売らない」という選択をもちろん取ることもできます。

*Opendoorは、自社の再販が難しそうだと判断した場合、手数料は15%ほどにまで上がると言います。

Zillow GroupのCMO(最高マーケティング責任者)、Jeremy Wacksman(ジェレミー・ワックスマン)によると、インスタント・オファーズを利用するのに最も適した売り手は、「多くの修繕を必要としない家」を所有する人だそうです。なぜなら、Zillowのオンライン買取再販サービスでは、再度売りに出すまでに行う修繕の費用分を差し引いて家の査定価格として出すからです。

その一方で、消費者の需要も非常に多様化しています。その結果、いかに高額な査定価格がつくかということよりも、「内覧に対応する必要がない」「すぐに現金化することが可能」といった所に、オンライン買取再販サービスへの魅力を感じている人たちが一定数存在するということもジェレミー・ワックスマンは主張しています。

盛り上がるアメリカのオンライン買取再販業

オンライン買取再販サービスは、もともと2013年に設立された不動産テック企業、Opendoorが始めたものです。

賛否はありますが、そもそも買取再販業自体がアメリカの住宅危機の原因の一端を担っていと言われています。

*ここでは、2007年頃から露見し始めたサブプライムローン(プライム層(優良顧客)より下位の層に向けて貸し付けられたローン商品)の不良債権化のことを指します。これは、2008年のリーマン・ショックにも発展しました。

こうした背景もあり、Opendoorの事業は当初”リスキーなビジネスモデル”だと言われていました。しかし同社は2016年に、ベンチャーキャピタルのNorwest Venture Partners(ノーウェスト・ベンチャー・パートナーズ)より230億円(≒2億1000万ドル)もの投資を受け、注目を浴びます。これを機に、買取再販業に乗り出す不動産テック企業がアメリカで増え始めました。

2015年には、オンライン買取再販を主要事業とするテック企業Offerpad(オファーパッド)が設立され、2018年には165億円(≒150万ドル)の融資を獲得。2017年の初めには、不動産検索サイトを運営しながら仲介も行う不動産テック企業Redfin(レッドフィン)が、「Redfin Now」というオンライン買取再販サービスの試験運用を開始しました。

それに続いたのが今回のZillowのオンライン買取再販業への正式進出発表です。しかし、なぜOpendoorやOfferpadが巨額の出資を獲得しているにも関わらず、Zillowの株価は発表翌日に9%も下落したのでしょうか。

賛否がわかれるZillow Groupへの評価

【出典】Youtube:https://www.youtube.com/watch?v=dCrURbf4o_s&ab_channel=Zillow

これまでのZillowは、不動産検索サイトへの広告掲載を収益の基盤としてきました。その収益はなんと年間235億円(≒2億1370万ドル、2017年度)にも上ります。今回発表された買取再販業が良くも悪くも注目を浴びているのは、これまでグループ全体として、広告収入を事業基盤として莫大な収益をあげてきたZillowGroupが、”全く異なるビジネスモデル”に乗り出したことにあるようです。これが、今までの決断とは大きく異なる点です。

それでは、今回のオンライン買取再販業への進出に対する意見を見て行きましょう。

・反対派

経済・金融情報に特化したニュースメディアBloomberg(ブルームバーグ)の記事では、ドイツ銀行のアナリストが以下のようなコメントを出しています。

今回の発表を聞いて、投資に対して利益率の高い広告収入から、多くの資本を必要とする上に利益率も低いオンライン買取再販業に進出するということに、私たちはショックを受けている

これが、まさに多くの投資家がZillowの株を売りに走った理由の一つです。OpendoorやOfferpadは、もともとオンライン買取再販サービスを主要事業としていますが、Zillow Groupは異なります。Zillow Groupの収益源は、月間2億人近いユーザーが訪れる自社サイトでの広告収入による”比較的、安定した収益”を得ています。そうした収益による成長を見込んでいた投資家がZillow Groupの株を売りだと判断したのは、急激なビジネスモデルの変更によるリスク上昇を懸念してのことのようです。

・賛成派

世界有数の金融グループの一つである、RBC Capital Markets(アールビーシー・キャピタル・マーケッツ)の国際アナリストは、CNBCの取材に対し、Zillowの今回の進出は「納得のできる要素を多く含んでいる」と言い、以下のように述べています。

アリゾナ州フェニックスでは、Opendoorや他のオンライン買取再販業者の影響で、それまで市場の1%しか売りに出ていなかったのが、現在は3%まで上がっています。この市場が拡大し続けてマジョリティになるのは考えにくいとはいえ、ある一定の市場があることは確かです。さらに言えば、Zillow Groupは、売り手にも買い手にもアクセスすることのできる自社の巨大なプラットフォームを所有しているので、今回の進出は論理の適った決断だと思います

Zillow GroupのCEOラスコフ氏の考え

賛否の分かれる世間の反応に対し、Zillow GroupのCEOラスコフ氏は、CNBCの取材で以下のように発言しています。

Zillow Groupの今回の決断は、動画ストリーミングに強みを持ち、収益を上げていたNetflixが独自のコンテンツ企画/制作/配信に注力しはじめたのと同じようなものです。それは、彼らにとって大きな転換期だったけれど、同時に莫大なビジネスを生み出しました

以下のグラフを見てもわかるように、Netflixは2012年に初めて独自制作のコンテンツを配信し始めてから、登録会員数を急激に伸ばしています。2012年時点で3300万人ほどだった会員数は、その後の6年間で世界で1億2500万人(2018年5月時点)にまで及んでいます。その時価総額は、16.7兆円(≒1520億ドル)。ついに、ディズニーやアメリカケーブルテレビ最大手のComcast(コムキャスト)を超えました。ラスコフ氏の言う「莫大なビジネス」とは、Netflixがオンラインからリアルに踏み込むことで生み出した市場のことを指しているのでしょうか。

【出典】Statista:https://www.statista.com/chart/3153/netflix-subscribers/

*アメリカに本拠地を置く、動画ストリーミングサービスを提供する企業。Netflix Originalsは、Netflixが単独で制作発注した作品のほか、共同製作作品や独占配信権を獲得した作品などの総称です。自社の持つデータの強みを生かして視聴者の行動解析をし、それぞれの視聴者に最適な番組をリコメンドしたり、自社制作の番組では視聴率の取れる役者を使用したりしています。

同インタビューでラスコフ氏はこうも言います。

私たちは今回のことを、Zillow Groupの方向転換ではなく、拡大の一手だと捉えています。今、経済全体を見ると、消費者の期待値が変化したことがわかります。彼らは「ワンクリックで魔法が起きる」ことを望んでいます。それが、フードデリバリーであれ、移動手段であれ、メディアの消費であれ。その革命が不動産業界でも起きているのです

実際に、配車サービスを展開しているUber(ウーバー)は、乗客がお財布を開くことなく、配車・乗車・降車の全てをスマホの操作だけでできてしまう世界を実現しています。同社はワンクリックで注文した食べ物が指定した場所まで運ばれてくる「Uber EATS」というフードデリバリーのサービスを提供。こうした「ワンクリックでなんでもできる」という他業界での流れによる消費者ニーズの変化が、不動産業界にも押し寄せているのだと、ラスコフ氏は主張しているのです。

まとめ

賛否が大きく分かれた今回の発表ですが、Zillow GroupのCEOラスコフ氏は言います。

Zillowほど、住宅のデータを持っていて理解している企業は他にありません。また、私たちは膨大な数の買い手と売り手にアクセスすることができるので、これが大きな強みになると考えています

目標は、まず2018年末までに300〜1000の住宅の再販売をインスタント・オファーズで達成すること。また、買い取ってから90日以内に再販売することを目指していると言います。

2018年5月13日の発表から1週間で48ドルにまで下がった同社の株価は約1ヵ月後の5月9日には、56ドルまで回復。5月末現在、52ドルあたりの値を付けています。

オンラインからリアルの不動産に進出し始めたZillow Group。ラスコフ氏の強気の戦略は、果たして実を結ぶのでしょうか?

  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • LINE

こちらの記事もオススメです

【アメリカ不動産テック】カオスマップ解説 第二世代ポータルサイト編
【アメリカ不動産テック】カオスマップ解説 第二世代ポータルサイト編
2019.04.11 海外事例・ニュース
【アメリカ不動産テック】カオスマップ解説 第一世代ポータルサイト編
【アメリカ不動産テック】カオスマップ解説 第一世代ポータルサイト編
2019.03.08 海外事例・ニュース
【ニュース解説】Compassにソフトバンクが450億円を出資
【ニュース解説】Compassにソフトバンクが450億円を出資
2018.12.21 海外事例・ニュース
【ニュース解説】Opendoorにソフトバンクが450億円を出資
【ニュース解説】Opendoorにソフトバンクが450億円を出資
2018.10.18 海外事例・ニュース
レストランやカフェをコワーキングとして使う、アメリカの不動産テックスタートアップSpaciousとは
レストランやカフェをコワーキングとして使う、アメリカの不動産テックスタートアップSpaciousとは
2018.08.17 海外事例・ニュース
WeWorkのライバル!?イギリスのシェアオフィスの先駆者The Office Groupとは
WeWorkのライバル!?イギリスのシェアオフィスの先駆者The Office Groupとは
2018.08.02 海外事例・ニュース
無料eBookダウンロード

不動産テックに関する様々な情報を掲載した最新レポートを無料でダウンロードできます。

所属団体

スマーブは東証一部上場企業の株式会社リブセンスが運営しています。

記事広告掲載について

スマーブでは、不動産テックに関する記事広告をお申込みいただく企業様を募集しております。どうぞお気軽にお申込みください。