「みんなで大家さん」集団提訴—1,191人が計114億円返還を請求、大阪地裁へ



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不動産クラウドファンディング商品「みんなで大家さん」シリーズを巡り、全国の出資者1,191人が2025年11月5日、運営会社の都市綜研インベストファンド(大阪市)に対して出資金計114億3,700万円の返還などを求める訴状を大阪地方裁判所に発送しました。原告側の弁護団はリンク総合法律事務所の弁護士を中心に構成され、同日までに第1次提訴の実施と第2次提訴説明会の予定を公表しています。親会社は「訴状が裁判所から届き次第、誠実に訴訟対応を行う」とコメントしています。報道は11月5日〜6日にかけて明らかになりました。

出典 毎日新聞

何が問題になっているのか

同シリーズは、成田空港北西部の開発計画など不動産事業への出資により分配金を受け取る仕組みとして、これまでに約3万8,000人から総額約2,000億円を集めてきたとされます。ところが、事業計画の変更や開発の遅れなどを背景に分配金の支払いが滞り、2025年夏以降は遅延・停止が顕在化。投資家とのトラブルが広がり、集団による返還請求に発展しました。

行政処分とその経緯

都市綜研インベストファンドは2024年6月17日付で大阪府から不動産特定共同事業法に基づく「業務の一部停止命令」と「指示」を受けました。いったん大阪地裁が処分の効力停止を決定したものの、その後大阪高裁が取り消し、最終的に同社は新規募集・販売の停止に従う運用が続きました。東京都も関連会社に対して処分を行っています。これらの行政対応は、投資家への重要事項説明の不備や計画変更時の手続きの問題が指摘されたものです。

難しい用語の解説

「不動産特定共同事業法」は、複数の投資家から資金を募って不動産に投資する事業(不動産クラウドファンディングを含む)の健全性を確保するための法律で、都道府県が事業者に対し、指示や業務停止命令、許可取消などを行う権限を定めています。投資家保護の観点から、重要事項説明や契約変更手続きが法令どおりに行われているかが厳しく問われます。「業務の一部停止命令」は新規募集・販売など特定の業務を一定期間止める行政処分で、投資家の資金流入を遮断し是正を促す効果があります。「執行停止」は、行政処分の効力を一時的に止める裁判所の決定ですが、上級審で取り消されることもあります。今回も最終的には高裁判断により停止は維持されませんでした。

これまでの資金動向と分配金遅延の実情

報道各社の取材によれば、同シリーズでは大規模案件の進捗遅れと分配金原資の逼迫が疑われ、2025年夏以降に分配金の遅延・停止が相次いだとされます。運営側は今後の裁判対応とともに事業継続の方針を示す一方、出資者は元本の返還や損害の回復を求めて司法判断を仰ぐ構図です。

ニュースの見解

日本人の海外不動産投資家にとって、本件は「不動産クラウドファンディング」という同じ器を使う投資でも、事業者の開示姿勢、資金の流れ、監督当局の実効性、法的救済手段の可用性がリターンとリスクを大きく左右することを改めて示す出来事です。まず、海外案件への出資でも、現地当局のライセンス区分や適用法令、ファンドの分別管理体制、エスクローや信託口・保全スキームの有無、監査済み財務の入手可能性、配当原資の根拠(運用収益か、資金繰りか)を自分の言葉で説明できる水準まで確認する姿勢が重要です。

次に、事業計画が遅延・変更した際の投資家への説明義務や同意取得プロセスが契約と法令に適合しているかを、投資前に開示資料で点検することが望まれます。さらに、係争時にどの法域の裁判所で、どの言語・費用感で救済を求められるのか、紛争解決条項と投資家集団の組成可能性を含めて見通すべきです。総じて、海外不動産クラウドファンディングを検討する際は、想定利回りだけでなく、規制環境・ガバナンス・資金保全・情報開示・退出手段の5点を最低限のチェックリストとして据えることを強く推奨します。今回の日本国内の事例は、国や法域が変わっても通用する実務的な教訓を与えるものであり、案件選定とポートフォリオの分散、そして「理解できるものにだけ投資する」という原則の徹底が長期的な防衛線になります。