不動産テック・カオスマップ制作の元祖がパネルディスカッションで語る

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不動産テック・カオスマップ制作の元祖がパネルディスカッションで語る

はじめに

2019年8月22日に、不動産テックのカオスマップが更新されました。発表したのは、不動産テック協会です。不動産テック協会は、最新版の第5版をイベントにて発表しました。

画像出典元:一般社団法不動産テック協会ホームページ

会場に集まった登壇者は、初版のカオスマップ制作に取り組んだメンバーです。当日は、「初版を作ったときの感想」「第5版までの変遷について」が語られ、貴重な機会となりました。そのときの内容をハイライトで紹介するのが、本記事です。早速、ご覧ください。※以下、敬称省略です。

登壇者の紹介

モデレーター、パネラーを紹介します(画像上、左から)。※以下、敬称省略します。

  • 赤木正幸(モデレーター)
  • 井上裕太
  • 川戸温志

赤木正幸/不動産テック協会代表理事(モデレーター)

赤木氏は、リマールエステート株式会社で代表取締役社長 CEOを務めています。赤木氏は、不動産テック協会発起人の一人です。

井上裕太/株式会社quantum最高投資責任者兼QUANTUM GLOBAL CEO

井上氏は、株式会社quantumという会社で、最高投資責任者兼QUANTUM GLOBAL CEOを務めています。quantumは、事業を開発する会社です。さまざまな企業と、年間数十の新規事業を生み出しています。それらは、必ずしも不動産テック領域の事業ではありません。場合によっては、大手企業と一緒に投資をし、ジョイントベンチャーを作ることも。井上氏は不動産テックの専門家ではなく、事業開発や投資領域に強みを持つ人物です。その強みを生かし、不動産テックカオスマップの制作に初版からかかわってきました。

川戸温志/NTTデータ経営研究所シニアマネージャー

川戸氏は、コンサルタントです。NTTデータ経営研究所で、不動産分野に留まらず、広く、デジタルトランスフォーメーション領域の案件を専門に担当しています。不動産テックをキーワードにしたセミナーにも数多く登壇。2019年2月15日には、企業における不動産テックの取り組み動向調査を公表し、注目を浴びました。国内だけでなく、不動産テック先進国アメリカの事情にも精通していて、この領域の有識者の一人です。

トークテーマ1/注目カテゴリーと気になる企業


赤木:カオスマップについて、それぞれの個人的な興味、関心はどこにありますか? どのカテゴリーに着目している? 気になっている企業は? 井上さんからお願いします。


井上:気になっている企業を挙げると、ツクルバさんです。つい先日、上場しました。上場まで駆け上がる変容というか、“今後の不動産テック領域を象徴する存在”だなあと思っています。初版の不動産テックカオスマップを作っていた当時、ツクルバさんは、どちらかというとデザインファームでした。デザインの力で事業をされていて、ちょっとメディアをやっているような立ち位置だと思っていたら、バっと伸長し、その立ち位置から進化しました。サービス特性は、デザインファームならではのアプローチです。

画像出典元:https://tsukuruba.com/


井上:物件価値の軸をストーリーに据えて、それを上手に“見える化”しています。インターフェースに気を使い、ユーザーとやり取りをする設計がうまい。不動産テックではあるが、従来の不動産テックとは違い、デザインに際立った強みも持っています。

画像出典元:https://cowcamo.jp/


井上:一般消費者からすると、ツクルバさんの『cowcamo(カウカモ)』は、単純なおしゃれ不動産サイトのように見えます。しかし、裏側はそう単純じゃない。現在は、類似サービスがたくさんあり、テクノロジーの特性による純粋な差別化が難しい時代です。にもかかわらず、ツクルバさんは上場までいきました。つまり、違うんですよ。類似サービスのそのほかと、ツクルバさんは。

川戸:デザインというキーワードだと、海外の不動産テックは、オシャレなデザインが目を引きますよね。

井上:たぶんですね、国内の不動産テック領域は黎明期なんだと思います。だとすると、優れたデザイン性って、消費者はそこまで求めないのかもしれません。事業者側からすると、デザインで勝負をする必要がない。テクノロジーによる利便性の向上で競う、というステージが主戦場というか。でも、特定のカテゴリーにおいて類似サービスが増えると、そのカテゴリーにおいては、次のステージにステップアップすることもあるでしょう。こうなると、そのカテゴリーのなかでは、局所的に黎明期を脱するわけです。テクノロジーによる差別化では勝負が決まらなくなります。その領域が類似プレーヤーであふれかえり、混雑すれば、ユーザーは「どれを選べばいいのだろう」となる。ここで選ばれる決め手として1つ挙げられるのが、買う人、借りる人、貸す人、エージェントなどの、ユーザーにとって、「この体験が心地よいな」「このサービスは簡単で楽だ」のような部分だと思うんです。それを与えられる1つが、デザインなのではないでしょうか。

井上:その体現者が『cowcamo』だと仮定すると、今後は、もっとデザインのパワーが必要とされるのでは。私にそう感じさせたのが、ツクルバさんの上場でした。つまり、不動産テック領域においてデザインの力は今後、もっと必要になっていくのではないかと感じています。

赤木:カテゴリーを挙げると、どうでしょう? 川戸さんはカオスマップのどこに着目していますか?


川戸:スペースシェアリングのカテゴリーが、以前から気になっています。この領域は、さまざまなサービスがたくさん出てきていて、代表的なところだと『OYOLIFE』や『ADDress』が見逃せません。3か月や1か月、人によっては1週間くらいのショートタームで、住むところを転々と変えていく“アドレスホッパー”みたいな人が、日本でも脚光を浴びています。特徴は、「ネガティブな理由から定住できない」のではなく、自らの意思で能動的に住むところを転々としているという、ポジティブな動機です。

川戸:荷物1個を持って、彼らは移動します。そうした価値観を持つ人へ向けた、従来とは違うありかたの家、住居という“不動産”が国内にも生まれているのです。このトレンドは、現代を象徴しているように思えてなりません。

川戸:90年以降生まれの世代を“Z世代”などと呼びますが、彼らはお金よりも、思い出であったり、人とのつながりであったりを重視する世代です。Z世代向けのコリビングサービスは、海外でも流行っています。彼らは家を探すときに物件のスペックを重視しません。何を重視するかというと、たとえば、物件のコミュニティに誰がいるか、です。そのエリアに自分がいることで、見たり聞いたり学んだりできる体験を重視します。

川戸:自分が起業を考えているなら、優秀な経営者と知り合えるコミュニティへ向かうし、デザイナーとしてのキャリアを積みたいなら、センスがよいデザイナーが集まるコミュニティを目指すわけです。


赤木:「そこに行くと新しいつながりができるよね」「求める価値観の人たちと、つながれるコミュニティを持つ物件がいい」そんな発想ですかね。


川戸:海外だと、そういったコリビングを探すとき、ウェブから入っていきます。住んでいる人のプロフィールを見て、「この人たちのコミュニティに自分も加わりたい」という意思が、住まいの決め手になるわけです。一歩間違うと出会い系サイトのようなニュアンスになってしまいますが(笑)、テックの使われかたは非常にユニークです。ちなみに、赤木さんはどのカテゴリーを注視していますか?


赤木:ブロックチェーンです。「そういえば、不動産テックカオスマップには、ブロックチェーンのキーワードが存在しないな」と感じていました。不動産テックの進む海外でも、ブロックチェーン×不動産のキーワードは、まだまだ、グレーゾーンといった印象です。世界観としては大きく2つあると思っています。トランザクションをブロックチェーンにのせようとするものと、不動産をトークン化し、小口にしてバラまこうする動きの2つです。次回(第6版)なのか、次々回(第7版)なのか、その先なのかはわかりませんが、いずれ、必ず不動産テックのカオスマップに入ってくるだろうと考えています。

トークテーマ2/不動産テックカオスマップは今後どうなる?


赤木:次のテーマは、今後の不動産テックカオスマップの行く末についてです。海外を見ると、アメリカ、ドイツ、スペイン、オーストラリア、インド、中国などにも、不動産テックカオスマップは存在します。

資料提供元:一般社団法人不動産テック協会・赤木正幸


赤木:外国を参考に国内のカオスマップも修正する、という可能性もあると思います。お2人は、今後、どうなっていくと感じますか?


井上:個人的には、いまの分類軸では、ないほうがしっくりきます。


赤木:たとえば?


井上:第1版でやった軸によるカオスマップの方向性をもう一度、模索したいですね。たとえば、“井上版”なら許されるのではないかな、とか。もっというと、いくつかバリエーションのようなモノが、あってもいいのかなとか。視点によって、まったく違う意味合いのマップになるなあと。

井上:最近、海外で気になっているモノに、『WeWork』のような、不動産×コミュニティのサービスがあります。自社ビルのテナントに向けた、フードデリバリー、テナント企業同士のチャット、コンシェルジュ、フルーツやお菓子の宅配などです。コミュニティの価値を高めていくプロジェクトになるのだと思いますが、その現状を不動産テックカオスマップに分類するのは難しいですよね。いまだと、業務支援のカテゴリーに入るのかな。カテゴリーの細分化を進めるとか、軸で切り分けるとか。そういう“●●バージョン”にトライすると、さらに面白いカオスマップができるように感じています。なんていって、ハードルを高く設定するような発言を自らして、自分で乗り越えられるかわからないんですが(笑)。


川戸:カテゴリーの見直しについては同感です。ぶっちゃけていうと私も見直したいと思っていました(笑)。更新のたびに、掲載されるサービスや企業の数が増えますよね。すると、カテゴリーを見直す手もどんどんと増すため、「いつまでたってもカテゴリーの見直しに着手できない」と感じていたところです。第5版を迎えたいま、「もう無理かな」というのが率直な感想でした。あとは、カテゴリーの細分化でいうと、CRE系、商業用不動産のカテゴリーは、いずれ、カオスマップに追加されるのではないかと思っています。現時点で、海外だとたくさんあるのですが、日本には、ほとんどありません。ぜひ、もっと出てきてほしいなと思っています。


赤木:私は、自動でカオスマップが生成される、クラウドサービスの誕生を願っています。不動産テックにはさまざまなテクノロジーが投入されていますので、技術的には実現可能なのではと。他力ではいけませんが、ぜひ、どなたか、よろしくお願いいたします(笑)。

 

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