利用率96%を達成した『マイボックス』が、当初に採用していた致命的なUIとは(前編)    

利用率96%を達成した『マイボックス』が、当初に採用していた致命的なUIとは(前編)

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利用率96%を達成した『マイボックス』が、当初に採用していた致命的なUIとは(前編)

2018年の幕があがり、繁忙期の到来です。賃貸物件を中心に、利用者から不動産会社への物件問い合わせは、日を追うごとに増えているのではないでしょうか。問い合わせの手段は、来店、電話、メールをへて、現在はチャットが主流になりつつあります。

ネットへの物件掲載件数が最大手であるライフルホームズをはじめ(産経メディックス調べ)、仲介を主戦場とするハウスコム、エイブル、アマパンショップなどもチャットを活用し、不動産テックに積極的な姿勢を見せています。

そんな、チャットを活用したサービスのなかから、本企画で取り上げるのは、ハウスコム株式会社の『mybox(マイボックス)』です。新春の特別企画として、前編と後編の2回にわたってインタビュー記事をお届けします。

話をお聞きしたのは、同社サービス・イノベーション室の室長、安達文昭氏です。今回ご紹介する前編では当初10%以下だった利用率を96%へ高めた、『マイボックス』開発秘話をお伝えします。

物件探しから契約までを完結した『マイボックス』の特徴

Q:チャットで部屋を探せるサービスが好調だとお聞きしています。現状を教えていただけますか。

『マイボックス』を利用されているお客様の数は、現在お問い合わせ全体の約40%にのぼります。一般に、「よく使われている」と判断される率は20%なので、現在は安定した利用率を維持できているということになりますが、リリース当初はユーザーにまったく使われず、苦労しました。

Q:「まったく使われず」とは、利用率が悪かったのでしょうか。

ええ。当初利用率は10%もありませんでした。社内からも、「なんのために作ったんだ」という声が聞こえてきました。私の心の内は、悔しさで一杯でしたよ。

サービスをリリースした当初、利用者にとって大変便利なサービスが開発できたぞという自負がありました。だから、どうして使われないのだろうかと悩んだものです。

Q:どのように便利なサービスなのでしょうか。『マイボックス』の特徴を教えてください。

大きく分けると次の5つの特徴があります。

  1. チャットサービス(LINE)
  2. AIサービス
  3. 2つのオンラインサービス
  4. 物件の周辺情報サービス(MAPPLE)
  5. 来店予約サービス

1つめの「チャットサービス」とは、LINEを活用したものです。トーク画面のなかに、店舗とチャット、というボタンがあり、タップすることで店舗の担当者とチャットできます。「この物件を内覧できますか?」「自転車置き場はありますか?」など、利用者の聞きたいタイミングで質問できる点がメリットですね。聞き忘れがなくなりますよ。

2つめの「AIサービス」とは、人工知能とチャットできる機能です。LINEと同じようにメッセージを打ち込むと、人工知能が簡単な質問を返してきます。一問一答式で答えていくと、希望地周辺の空室物件を探してくれるんです。空室物件はAIで探して、複雑な質問がある場合は店舗へチャットするという方法なら、利用者は自分の隙間時間を活用して部屋探しができます。

3つめの「2つのオンラインサービス」とは、オンライン内見とオンライン契約のことです。弊社のオンライン内見はLIVE中継なので、“今の室内”を確認できます。内見日を決めるのは利用者で、当日届くメールに記載されたURLからアクセスできるサービスです。

オンライン契約は、申込書、身分証明書、収入証明書などの書類をパソコンやスマホから申請できるサービスですね。利用者へ、書類の受け渡しだけを目的とした来店や、郵送の手間をかけません。

4つめの「物件の周辺情報サービス」では、物件の周辺を確認できます。地図・地域情報に大変定評のある昭文社さんの「MAPPLE」と連係している点が特徴です。引っ越し先の地理を調べるというならオススメですよ。

5つめの「来店予約サービス」は、『マイボックス』から直接来店予約ができるものです。来店予約のためにメールを立ち上げて、店舗へ連絡する行為は思いの外めんどうです。不便さを解消し、快適で楽しい部屋探しを味わってもらうためにこの機能は欠かせません。

以上の5つのサービスを実現したことで、物件探しから契約までをマイボックス内で完了できます。お客様にとって、便利なサービスを提供できる!という思いがありました。

ログインの直前で大多数が離脱。リリース当初の苦難

Q:5つの特徴があって便利なサービスなのに、当初、お客様にまったく使われなかった原因は?

結論からいうと、当初『マイボックス』はお客様にとって、わずらわしいUIだったんですね。

私たちは、低い利用率の原因を明らかにするため、ログの解析からはじめました。どれだけの数の人が『マイボックス』へログインをして、『マイボックス』のどこをクリックして、どういうページ遷移をしたのか、というユーザー行動を追い、しらみつぶしに調べたんです。調査の結果、ログインの直前で離脱する利用者が極端に多い、というデータが見てとれました。

このデータからわかることは、そもそも『マイボックス』を使ってもらえていないということです。歯を食いしばって現実を受け止めました。でも、同時にこうも考えました。

「裏を返せば、機能の使い勝手が悪いと判断されたわけではない。一度でも使ってもらえれば、気に入られる可能性はまだある」

Q:ログイン直前で離脱されてしまう理由、そのお客様の本音は、どうやって調べたのでしょうか?

お客様へ直接、聞いて回ったんですよ。本社で話しているときでした。店長や営業マンに「どうしてお客様に使ってもらえないんだろう」「お客様の反応は?」と聞いても、的を射た答えが返ってきません。毎日のようにお客様と接している現場の人間が、お客様の反応をつかみきれていないわけです。「これは何かあるな」と感じました。

マクドナルトのトップだった原田泳幸さんが以前、『現場に出なければ、お客様の真意は理解できない』というようなことを言われていましたが、その言葉を思い出したんです。「現場にお客様の真の反応はある、それを自分の目で確かめねば」という気持ちに駆られました。

本社へ配属されて13年くらいになりますが、私はもともと現場の人間です。ずっと店舗で接客をしていましたから、会話からお客様の真意を確かめることには自信があったんです。予感は的中しましたね。店舗へ行って正解でした。

「これ、会員登録ですか?」利用者の真意が明らかに

Q:お客様とのやりとりを教えてください。

こんな具合です。「お客様は今回、この物件をどうやってお知りになりましたか?」と聞きます。すると、大手の物件検索サイトの名前を挙げるお客様が大半でした。

「その検索サイトからのお問い合わせ後に、こういうメールが届きませんでしたか?」と私のスマホを見せると、お客様の反応は、「きたきた」って。

お客様のスマホで同じようなメールを探してもらい、見つけたメールを一緒に見ながら、「ここのURLをタップしませんでしたか?」と確認します。URL をタップすると、『マイボックス』のログイン画面へ遷移するんです。

Q:お客様の返事は?

「あ、しましたよ。したんですけど、IDやパスワードを入れろって出るから、そのまま離脱です」「これ、会員登録ですか?」といった答えが圧倒的に多かったです。このようなお客様の声を聞いたとき、すぐに、ログインの直前で離脱する利用者が極端に多い、というログ解析の結果を思い出しました。ここで初めて腑に落ちるわけですね、お客様はIDやパスワードの入力・登録がわずらわしいんだと。これは致命的でした。

武蔵小杉店や蒲田店などの5店舗くらいをまわり、約30組のお客様を接客しましたが、ほぼ100%に近い割合で、皆さん、同じ意見でした。早急に動く必要があると感じました。

チャットのスピード感は、お客様と営業マンに安心感を与える

Q:どう改善したのでしょうか?

ログイン方法をダイレクトログインへ変更しました。ダイレクトログインとは、ログインをするときにIDやパスワードの入力が必要ないUIです。ログインのわずらわしさを解消するには、もってこいだと考えました。すぐに開発へ取り掛かり、2ヶ月の検証期間をへてリリースしました。

この結果、ダイレクトログインへ改修したあとのログ解析で一時、利用率は96%まであがったんです。やっと、お客様に便利なサービスとして『マイボックス』は認めてもらえた気がしました。

Q:店舗スタッフの反応はいかがでしょうか。「接客がしやすい」「作業効率が上がった」などの声は安達さんの耳に届いていますか?

ええ、届いていますよ。「やっぱりチャットのほうがいい」という反応が多いです。メールにはメールのメリットがありますが、賃貸の部屋探しを営業マンとお客様の間でするときは、チャットにぶがあります。

メールの場合、送ったメールがお客様に読まれているのかどうか営業マンはわかりません。新たな提案をしたくても、お客様からもらうメールの返信内容を見てからでないとお客様の意思を確かめられず、話を進めることが難しいのです。

しかし、チャットだとLINEのように“既読”がつくんですよ。「あ、読んでもらえた」という安心感が、営業マンにもお客様にもあります。この意思疎通の心地よさやスピード感が、営業マンからするとありがたいわけです。

※お客様の利用画面例

店舗スタッフの反響を受けて、ハウスコムではLINEでも、部屋探しができるようにしました。方法は簡単で、ハウスコムを友だち追加していただければOKです。友だちとLINEする気軽さで部屋探しができます。これがお陰様で非常に好調で、“ハウスコムを利用して部屋を探す人の数”を増やすことに大きく役立ちました。やはりLINEはすごいですね。

1つだけ、リリース時に実現できなかったこと

Q:ログインのUIを変更した一件から、安達さんが学んだことを教えてください。

お客様の立場を学び直す、目線を合わせることの大切さですね。

今回の一件で、自分を戒めました。私は立場上、ハウスコムにおける不動産テックの舵取り役を任されていて、テクノロジーやインターネット関連の情報に触れる機会が多いです。その状況が自分のなかで当たり前になってしまい、気づかないうちに利用者の真意や立場を理解しきれない頭になっていたと振り返りました。

Q:油断や気の緩みがない盤石の態勢、といった印象を受けます。あえてお聞きしますが、課題についてはどうお考えですか?

そうですね……。『マイボックス』には、1つだけ、リリース時に実現できなかったことがあります。最大の特長として考えていたサービスだっただけに、実現できなかった悔しさを残しているんです。最初に頭に浮かぶ課題は、その悔しさを晴らすことですね。

Q:最大の特長ですか、どんなサービスなのですか?

オンライン鍵渡しサービスです――(後編へつづく)

後編のテーマは、「挑戦」です。業界の最前線へ迫り、不動産テックへ精力的に取り組むハウスコムならではの奮闘、その裏側をご紹介しています。

後編記事はコチラ→「オンライン鍵渡し」への挑戦!不動産会社が仕掛けた、来店の必要が一切いらない賃貸契約へ迫る(後編)

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